分娩の際には、分娩監視装置という、お母さんのお腹にマジックベルトで巻きつける装置をつけて、お腹の中にいる赤ちゃんの心拍数の変化を観察します。赤ちゃんの心拍数の変化を、陣痛の周期とともに観察して、胎児心拍数陣痛図(CTG)といわれるグラフで赤ちゃんが元気なのか、元気でないのか、苦しい状態なのかが推測できると考えられています。
分娩監視装置は、陣痛が始まって入院したとき(10分間隔になったころ:分娩第一期)に20分以上装着して、赤ちゃんの状態が正常であることを確認する必要があるといわれています。
ただし、分娩監視装置はお腹にしっかりと巻かれて機械につなげて観察するものですので、元気で特に問題がないお母さんにとって、自由に動き回れなくなってしまい、「自然な出産」と望んでいるお母さんやご家族にとっては、苦痛や不快感をうけることにもなります。一方で、分娩中は、赤ちゃんが急に危険な状態になる可能性が常にあるため、常に、分娩監視装置をつけておくべきだという考え方もあります。どちらが正しいのかは一概にはいえないところですが、少なくとも陣痛があって入院したときには、特にリスクのない、あるいはリスクの低いお母さんの場合には、まず確認のために20分程度は観察する必要がある、と考えられています。
赤ちゃんが正常な心拍数を示していた場合には、助産師が赤ちゃんのお腹に器具を当てて心拍数を聴く方法(間欠的児心拍聴取)を15~90分ごと(少なくとも1時間半に1回程度)チェックする方法でもよいといわれています。もちろん、分娩監視装置を連続して装着しておくことでも構いません。
赤ちゃんやお母さんに問題がない場合には、このような方法での監視で十分ですが、ハイリスクなお母さんや、陣痛促進剤(子宮収縮薬・例えばアトニンという薬)を投与している場合には、分娩監視装置は外さずに、連続監視することが必要だといわれています。
ハイリスクのお母さんというのは、
- 糖尿病を合併している
- 妊娠高血圧症候群
- 分娩中のけいれん(子癇)を起こしたことがある
- 子宮の手術をしたことがある
- 脳性麻痺のお子さんや、赤ちゃんが子宮内で亡くなってしまったことがある
- 胎盤の位置が低い(低置胎盤)
- 赤ちゃんの頭が下になっていない(胎位異常)
- 赤ちゃんの推定体重が2000g未満、発育不全があるといわれている
- 双子や三つ子(多胎妊娠)
- お母さんに38度以上の熱がある、
- 子宮の入り口を広げるメトロイリンテルを挿入している
- 無痛分娩を行っている
等の場合が当てはまります。このようなハイリスクのお母さんに対して、分娩監視を適切に行っていなかったとすれば、それ自体、問題があります。
トイレに行くときや、産婦人科医師が必要だと考えるときに、一時的に外すことはよいとされていますが、基本的には連続して分娩監視装置を装着しておく必要があるといわれています。
その他にも、
- 破水したとき
- 羊水混濁や、羊水が血性だったとき
- 徐脈(赤ちゃんの心拍数が低下した)とき
- 頻脈(赤ちゃんの心拍数が上昇した)とき
- 分娩が急に進んだとき
なども、連続して監視する必要があります。
分娩が進むと分娩室に移動することが多いですが、分娩室に移動するのは子宮の入り口が全開(10cm程度)になったときで、全開になったとき以降(分娩第2期)には、連続して分娩監視装置を装着する必要があります。
ハイリスクな状態だったのに、分娩監視装置をつけていない場合や、一時的に外してそのままになってしまった場合などは、その間に赤ちゃんが苦しい状態になッテ事故につながることがあります。
分娩監視装置は、赤ちゃんの状態を知る唯一の方法です。しっかりモニターをしておかなければ、手遅れになってしまうこともあるのです。