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Q K2シロップはなぜ飲ませる必要があるの?

2021年10月07日 | 判例・Q&A

Q&A

ケイツーシロップ(ビタミンK2シロップ剤)は赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐためのお薬です。

血管が傷ついたとき時、出血を止めるためには、血液を固めるために必要な物質である「ビタミンK」が不可欠です。大人は大腸の中にいる腸内細菌が作ったビタミンKが利用されるので、ビタミンK欠乏症になることはめったにありません。

しかし、お腹の中にいる赤ちゃんの腸にはまだ腸内細菌が存在していませんので、必要なビタミンKは胎盤を通してお母さんからもらっています。ただビタミンKは胎盤を通りにくいため、生まれてきた時の赤ちゃんの体内には、大人の5分の1程度のビタミンK量しかないといわれています。また、生まれてすぐには十分な量の腸内細菌が住みつかないので、母乳などからビタミンKを摂る必要がありますが、母乳自体にビタミンKが含まれている量が少ないためケイツーシロップを飲ませる必要があります。

ビタミンKが欠乏すると新生児ビタミンK欠乏性出血や乳児ビタミンK欠乏性出血を発症することがあります。ビタミンKを投与しないと新生児では約300人に1人の割合でビタミンK欠乏性出血が起こると推定されています。

またビタミンKの予防投与開始前の全国調査では約4000人に1人が乳児ビタミンK欠乏性出血を発症するという結果でした。(1978年から1980年調査:化血研報)

赤ちゃんの肝臓機能は未発達なためビタミンKを活用する機能が低く、適切な量のビタミンKが体内にあったとしても、血液凝固反応に効率的にビタミンKを活かすことができません。積極的にビタミンKを補充しておかないと生体の維持に必要な程度に血液を凝固させることができないのです。

そのためビタミンK欠乏性出血の予防としてケイツーシロップを飲ませることが必要です。予防としてケイツーシロップを飲ませる場合、一般的に下記のタイミングで3回飲ませます。

  1. 出生後、数回母乳やミルクを与えたあと
  2. 生後1週間または退院時のいずれか早い方
  3. 1ヶ月検診時

3回とも、ケイツーシロップ1ml(2mg)を口から1回飲ませます。低体重や合併症を持って生まれてきた赤ちゃんには状態や経過をみて、投与量や回数を決めることもあります。

訴訟になったビタミンK不投与に起因する乳児死亡症例

「山口乳児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」

山口市の助産院で2009年8月に出生した長女が、生後2ヶ月で硬膜下血腫が原因で死亡したのは、助産師が標準的な予防方法であるビタミンK2シロップを助産師が投与しなかったことが原因であると主張して、助産師を相手取り約5600万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を山口地方裁判所に起こした。助産師は「ホメオパシー医療協会」に所属しており、ビタミンKの「記憶」や「波動」、「オーラ」を持ち、ビタミンKと同じ効果があると称する「レメディ(ホメオパシーにおける治療薬)」をビタミンKの代わりに投与していた。また本物のビタミンKを投与していないことを担当医師に気づかれないよう、母子手帳には「ビタミンK投与」と偽って記載していた。
2010年12月21日山口地方裁判所において母親と助産師の間で和解が成立しましたがし和解内容につては公にしない条項が含まれているため明らかになっていません。