まだ陣痛が来ない妊婦さんに、早くお産が来るように、陣痛促進剤などを使って、人工的に陣痛がない状態から分娩へと誘導することを「分娩誘発」といいます。
分娩誘発は自然な分娩開始を待てない状態のときや計画分娩を行う場合に実施します。出産予定日を2週間過ぎたときや破水から時間が経過しているときなどは感染などのリスクが高まるので早く出産をさせる必要があります。またお母さんや赤ちゃんになにかの異常があり、妊娠を早く終了させる必要が生じたり、赤ちゃんを早く外に出したほうが良い場合は、自然な分娩の開始を待っていることができないので、分娩誘発を行って陣発を起こさせます。
この他に、またお母さん自身の希望や医療施設側の体制に合わせて、計画分娩を行う場合もがあります。最近では無痛分娩時に計画分娩を実施する施設も多くなっています。計画分娩を行う場合も分娩誘発を実施します。
赤ちゃんは陣痛が来なければ生まれないので、分娩誘発はこの陣痛を起こさせるための処置です。お母さんや赤ちゃんの状態が悪くなって、分娩誘発をできるだけ早く始めた方がよい場合には、子宮頚管熟化処置を行わないこともあります。しかし、計画分娩を行う場合は、普通は、計画出産予定日の前日に入院し、子宮口の開き具合やおなかの赤ちゃんの状態を診察して、子宮口が開いていない場合には、子宮頚管熟化処置(バルーンやラミナリアなどの挿入)を行います。その後点滴で陣痛促進剤(子宮収縮剤)の投与を開始します。陣痛促進剤の投与はガイドラインで定められた量から開始されますので急激な陣痛が起こることはほとんどありません。陣痛の間隔や強さ、子宮口や赤ちゃんの状態をモニターや診察で確認しながら、少しずつ投与量を増やして陣痛を起こしていきます。分娩誘発開始から出産に至る時間はかなり個人差があり、一概に何時間かかるとはいえません。
分娩所要時間は陣痛が始まってから胎盤が娩出されるまでの時間を指しますが、一般には初産婦で12~15時間、経産婦で5~8時間程度と言われています。分娩誘発で出産する場合は、誘発をしてすぐ陣痛が始まる人もいれば、数日かかる人もいるのでこのための時間をプラスしなければなりません。
分娩誘発をすることによって、より大きな痛みを感じることはほとんどありませんが、陣痛と同様の痛みは生じます。陣痛促進剤の量によっては陣痛が強くなりすぎることもありますので、その場合には量を調節する必要があります。人によっては子宮頚管熟化処置が、つらく感じる方もあり、痛みの感じ方は人それぞれです。
分娩誘発に関わる出産トラブルとしては、子宮頚管熟化処置の方法や陣痛促進剤の投与量、投与速度などに問題があるケースがあります。人工的に陣痛を起こす処置ですので、赤ちゃんの状態も常に観察しながら、異常がないかどうか確認しながら進める必要があります。観察をしなかったとしてトラブルに発展してしまうケースもあります。