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Q 赤ちゃんが胎便を吸い込んでしまう(胎便吸引症候群)?

2021年10月08日 | 判例・Q&A

Q&A

胎便とは赤ちゃんが生まれる前に腸で作られる濃い緑色の無菌性の便のことです。胎便は新生児が出生してから摂食を開始する前に排泄されるのが普通ですが、出生前や周産期(出産中)に羊水中に排泄されることもあります。予定日の直前または直後に見られる胎便の排出は正常な場合もありますが、胎便の排泄は感染症や血液中の酸素レベルの低下などのストレスに反応して起こることもあります。過期産児(予定日を過ぎた赤ちゃん)は別として、未熟児の分娩時に胎便が、認められることはほとんどなく、未熟児の胎便排出が認められる場合は、胎児が子宮の中にいる間に感染症を起こした可能性が示唆されます。

胎児がストレスにさらされてお腹の中で胎児が激しく喘ぎ、その結果、胎便を含んだ羊水を肺に吸い込んでしまうことがあります。出産前後、胎便に汚染された羊水が、赤ちゃんの気道内に入り込んで呼吸障害が引き起こされることによって、胎便吸引症候群が発症します。気道に吸引された胎便は更に肺炎を引き起こすこともあり、呼吸状態をより悪化させることになります。

出産前後は、臍帯が圧迫されて赤ちゃんへの血流が一過性に低下したりするなど、赤ちゃんが低酸素状況に陥りやすく、特に予定日を超えると胎盤の余力も低下するため、より低酸素のリスクは高まります。そのため、出産予定日を超えた過期産の赤ちゃんに胎便吸引症候群が発症する可能性は高いといわれています。

胎便吸引症候群では出生直後から呼吸障害が認められます。症状としては多呼吸や鼻翼呼吸(鼻を広げる呼吸)、陥没呼吸(肋骨と肋骨の間がへこむ呼吸)チアノーゼ(唇や皮膚が青紫になる)などが起こります。このような症状が認められると、すぐに気道の吸引や気管内にチューブを入れ(気管挿管)、人工呼吸管理を行います。胎便吸引症候群では、赤ちゃんは新生児仮死で生まれるため呼吸がうまくできず、胎便が空気の通り道である気道に詰まったり肺に沈着して、胎便の中に含まれている消化液や酵素などが作用で「肺炎」を起こしたり、吸い込んだ息を吐き出すことができずに、過剰に肺が膨らんでしまって一部が破ける「気胸」を発症することもあります。

赤ちゃんは出生して臍帯(お母さんの胎盤と赤ちゃんを繋ぐ紐のようなもの)を切断されると自分で呼吸をして、肺にたくさんの酸素を取り込み、肺にたくさんの血液が流れることによって全身に取り込んだ酸素を運びます。しかし生まれた直後に酸素をたくさん取り込むことができないと、肺に血液が流れにくい状態が続いて「新生児遷延性肺高血圧症」という状態になり、低酸素となって、「低酸素脳症」を発症してしまい、重篤の場合は脳に障害が生じて脳性麻痺などの後遺症が残ってしまったり、最悪の場合は死亡してしまうこともあります。

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