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Q 甲状腺に問題があるといわれたら?

2021年10月13日 | 判例・Q&A

Q&A

甲状腺の病気は女性に多く、妊婦さんでも赤ちゃんに影響を生じることから問題になります。症状や所見には表れない程度の軽い甲状腺ホルモン不足の状態を「潜在性甲状腺機能異常」といいますが、健康な人の3.3%~6.1%に潜在性甲状腺機能低下症が、0.8~2.3%に潜在性甲状腺中毒症が認められるといわれています。いずれも、女性に多く、年齢が上がるにつれて増加します。自覚症状はないことがほとんどです。

妊娠前から甲状腺機能の問題がある場合や、臨床症状から甲状腺機能の可能性が考えられる場合には、妊娠初期の血液検査で甲状腺ホルモンの状態をチェックします。妊娠初期の女性で甲状腺自己抗体検査の結果が陽性の場合は、潜在性甲状腺機能低下症と判断され、流産や早産の他に妊娠高血圧症候群の発症リスクが高くなるので、治療することによって、そのリスクを改善する必要があります。また近年の研究で、甲状腺ホルモンはお母さんの体に影響するだけでなく、胎盤を通して赤ちゃんの生育に影響している可能性が指摘されています。

妊娠すると甲状腺ホルモンの分泌量が一時的に変化します。これは妊娠初期に胎盤から産生されるh(エイチ)CG(シージー)ホルモンが甲状腺を刺激する作用を持っているためです。妊娠にともなってお母さんが甲状腺機能低下症を合併する確率は0.11~0.16%と約1000人に1人の割合です。妊娠中は症状が穏やかでも、産後に症状が悪化するケースが多いため、継続的な診察が必要となります。またお母さんが甲状腺機能亢進症を合併する確率は0.2~0.3%といわれていて、およそ500人に1人というやや高い確率です。妊娠初期の段階では一時的に甲状腺ホルモンの分泌が増加することもあるため、ホルモン分泌の異常が慢性的なものか一過性のものなのかを見極める必要もあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のような甲状腺疾患を未治療のまま放置したり、コントロールができなかったりすると甲状腺中毒の状態になることもあり、ストレスやウイルス感染などの原因で甲状腺クリーゼ(発作)を発症することがあります。妊娠によって甲状腺クリーゼの誘因となることもあります。甲状腺クリーゼが発症すると中枢神経症状や心不全症状などがあらわれ、最悪の場合は心停止となる可能性もあります。甲状腺クリーゼを発症し死亡に至るケースは10%以上と報告されています。

妊娠甲状腺中毒症は、妊娠初期の7~15週頃に胎盤で作られたhCGが甲状腺を刺激することで起こる症状です。血中hCGが50,000~75,000IU/Lという高い数値を示すと、妊娠甲状腺中毒症を発症する可能性が高くなります。妊娠甲状腺中毒症の症状はつわりが重くなるのが特徴で、他に動悸や多汗、体重減少があらわれることがあります。また多胎妊娠では症状は重くなりますが、妊娠14~15週になれば一般的に症状が落ち着くので特別な治療は行われません。甲状腺の異常はこの他にも様々な症状を引き起こす可能性が指摘されており、妊娠しているお母さんにもお腹の中の赤ちゃんにも高いリスクが生じますので、甲状腺に問題があるといわれている場合には、妊娠の際に産婦人科医と相談しておく必要があります。適切な治療を受けて、妊娠中もきちんと経過観察を続ける必要があります。

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