子宮筋腫は生殖年齢の女性の20~30%程度にみられる婦人科腫瘍の中でもっとも多い病態です。最近では超音波検査(エコー検査)の機械精度もあがっており、小さなものでも発見できるようになってきたため、もっとたくさんの患者がいるのではないかと考えられています。子宮筋腫とは、子宮を構成する平滑筋という筋肉の細胞が、異常増殖してできる筋肉の塊で、良性の腫瘤のことです。
子宮筋腫がある人が妊娠した場合を「子宮筋腫合併妊娠」といいます。子宮筋腫合併妊娠の場合は、流産や早産のリスクが上がります。また常位胎盤早期剥離や産道狭窄などの影響があることも知られています。妊娠の経過によって子宮筋腫の大きさが変わったり、子宮筋腫の痛みが起こったりすることあります。
しかし、子宮筋腫の部位によっては自然分娩で問題なく出産することができます。妊娠中に子宮筋腫の手術をすることも不可能ではありませんが、妊娠の継続や出産によほどの影響がない場合は、超音波検査を実施して慎重に経過観察をしていくのが一般的です。
筋腫自体の大きさ自体はあまり関係がありません。報告によると子宮筋腫の大きさの変化は50%程度が不変で30%程度が大きくなり、約20%は逆に小さくなるといわれています。妊娠が経過するにともなって、子宮は大きくなって行き子宮の筋肉が伸ばされて子宮筋腫への血流が妨げられ、子宮筋腫の性状が変化(変性)します。それによって発熱、吐気、筋腫の痛みなどの症状が起こります。また子宮筋腫の変性によって炎症物質が分泌されます。それによって子宮の収縮が起こり、流産や早産になりやすくなります。
胎盤はお母さんと赤ちゃんの血流を交換する役目を果たしているものですが、子宮筋腫の部分に胎盤ができると血流が比較的に不安定になり、胎盤がはがれやすくなってしまします。すると赤ちゃんが分娩される前に胎盤が剥がれてしまうこと(常位胎盤早期剥離)が起こります。上位胎盤早期剥離は子宮筋腫合併妊娠のリスクの一つと考えられています。また子宮筋腫がある場所が子宮の入り口近くの場合、産道が狭くなってしまって赤ちゃんが産道を通れないこと(産道狭窄)もあります。このように、子宮筋腫合併妊娠で、分娩時のリスクが大きいと判断される場合は、帝王切開での分娩が予定されることとなります。
前述したように子宮筋腫があっても、超音波検査(エコー検査)によって適切に妊娠の経過観察を行っていれば、安全に分娩できますので、産科の医師や助産婦と相談をしながら分娩に向けて準備することが重要です。