お腹の中で胎児の頭が上にある状態のことを逆子といいます。通常であれば、赤ちゃんは頭から産道を通り抜けるため、頭は子宮口のある下を向いた状態になりますが、逆子の場合は足やお尻が子宮口の方を向いています。逆子の状態で分娩に至りますと、赤ちゃんのお尻や足が卵膜とうまく密着していないため、赤ちゃんがまだ降りてきていない状態で破水(前期破水)してしまうことや、破水時に赤ちゃんより先にへその緒が膣内に出てしまう恐れがあるなど、様々なリスクがあります。
逆子の状態では、帝王切開によって分娩することが多いですが、分娩に至る前に赤ちゃんの胎位を正常な位置に戻す様々な処置がとられることがあり、その一つが外回転術です。外回転術とは、医師が妊婦さんのお腹に手を添えて、外から赤ちゃんをぐるりと回転させる方法です。子宮収縮を子宮収縮抑制薬で抑えながら、痛みの除去と腹壁の緊張を解くための麻酔をかけ、骨盤を枕などで高く上げて、手で赤ちゃんの頭部を反背中回りに回転させて体勢を戻す方法(赤ちゃんの姿勢によっては逆に回転させることもあります)です。外回転術にかかる時間はほとんど2、3分で長くても1回10分程度でおこなわれます。この手法で逆子を治せる確率は一般に約40~60%だといわれており、合併症としては常位胎盤早期剥離や胎児仮死、胎児死亡になることも少ない確率ですが存在します。そのため、外回転術を実施して経膣分娩をする場合は、緊急帝王切開になる可能性についても文書による説明が必要だといわれています。さらに、今まで帝王切開をしたことがない場合に限られ、胎児心拍モニタリング(CTGの観察)をしながら行うことや、緊急帝王切開が可能な体制で行うべきだといわれています。
また、外回転術を受けた直後に破水することもあるため、外回転術の実施は赤ちゃんが母体外でも生活できる妊娠36~37週ぐらいに行なわれます。外回転術によって頭位に矯正できた赤ちゃんが、分娩までに逆子に戻ってしまうケースもあります。
外回転術を行った場合の出産トラブルとして、胎児心拍モニタリング(CTG)による観察をしていなかった場合や、赤ちゃんが苦しい状態になったのに帝王切開術の実施が遅れたような場合があります。外回転術を行った後の赤ちゃんの状態を慎重に観察でき、緊急帝王切開が可能な施設で行う必要があります。