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陣痛促進剤-オキシトシン―

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。
陣痛促進剤とは、人工的に子宮を収縮する(陣痛を起こす)作用や子宮の入り口(子宮(しきゅう)口(こう))を柔らかくして開きやすくする作用のある薬剤で、出産を安全に進めていくために使用される薬です。
産婦さんの分娩の状況によって、医師が必要性を判断し、どの薬剤をどんなタイミングで、どのような方法で投与するのかを判断しながら使用されます。
陣痛促進剤には薬剤の種類が何種類かあります。投与方法も点滴や錠剤、膣剤などがあります。一番よく使われるのが「オキシトシン」という名前の点滴薬です。
点滴の場合には、陣痛促進剤の投与を始めて30分以上、様子を観察しなければならないといわれています。陣痛の間隔やお母さんと赤ちゃんの異常がなければ、投与する薬剤の量を少しずつ増やしていきます。なぜそのように慎重な投与をしなければならないかというと、陣痛促進剤の効果は個人差があり、人によって大きく違いがあるからです。あまり効果が出ない妊婦さんもいますが、強い効果が出過ぎてしまう妊婦さんもおられます。
そのため、輸液ポンプと呼ばれる精密な機械を点滴に繋いで、産婦人科診療ガイドラインで決められている1時間あたりの投与量を、正確に設定して薬剤を体内に流していきます。
体内に投与される薬剤の量が少しずつ増えることで、陣痛は少しずつ強くなっていきます。そのため陣痛促進剤を始めてすぐに陣痛が強くなるということは通常はありません。少しずつ投与する量が増えていくので、痛みも徐々に強くなっていきます。投与する量は必ず増量しなければならない訳ではなく、陣痛の間隔などを確認して減量や維持する場合もあります。その判断はお母さんの陣痛や赤ちゃんの心拍の様子を見ながら、医師や助産師が行っていきます。投与しても良い上限の量が決まっているため、上限に到達したらそれ以上増量することは危険です。使用している途中でなんからの異常があれば、すぐに減量や中止をしなければなりません。
妊婦さんからは、よく、自然の陣痛に比べて陣痛促進剤の陣痛の方が痛い、という話を聞きます。陣痛促進剤を使用してもしなくても同じ陣痛のはずですが、異常に痛いときには、陣痛が多すぎる「頻収縮」や、「子宮破裂」が起こっているサインのことがあります。ちょうどよい薬の量であれば、自然に起こる陣痛の痛みと同じぐらいの強さになるはずです。
陣痛促進剤の投与は、予定日を過ぎても陣痛が来ない場合、破水したのに自然に陣痛が始まらない場合、陣痛が弱くて赤ちゃんを押し出す力が十分ではなく、子宮口がなかなか開かず分娩が進まない場合、お母さんや赤ちゃんに負担がかかり早く分娩した方がいい場合などに使用されます。その決定は、医師が陣痛促進剤を使った方が安全である、と判断した場合です。陣痛促進剤を使う場合には、基本的には、そのリスクも説明し、文書による説明をしなければならないといわれています。
無痛分娩を行う場合には、麻酔薬の影響で陣痛(子宮の収縮)が弱まってしまうことがあるといわれています。麻酔薬が陣痛を弱めるメカニズムは明らかになっていません。このような麻酔薬の効果のために、無痛分娩では、陣痛の強さが弱くなり陣痛と陣痛の間隔が空いてきてしまう「微弱(びじゃく)陣痛(じんつう)」や、陣痛が弱くなることで分娩全体の時間が延びてしまう「遷延(せんえん)分娩(ぶんべん)」と呼ばれる状態になりやすく、無痛分娩ではほぼ陣痛促進剤が必要になります。無痛分娩の説明の際に、陣痛促進剤についての説明も同時に行われることが多いのは、そのような事情があるためです。
計画的な入院などで、入院した際に子宮口がまだ十分に開いていない場合や子宮口がまだ硬い場合には、陣痛促進剤と一緒に、子宮口に水風船のような器具(メトロイリンテル)を膣から挿入し、少しずつ子宮口を開かせていくという処置を併用することがあります。無痛分娩では、計画的に入院して行うことを希望するお母さんも多いため、そのような処置も必要になります。
このように無痛分娩を選択した場合、産婦さんは無痛分娩のリスクに加えて、陣痛促進剤を使用する副作用や合併症も考えておかなければなりません。無痛分娩のことに加えて、陣痛促進剤のことも事前に十分に説明を聞いて、納得したうえで無痛分娩を選択してほしいと思います。また、病院やクリニックが産婦人科診療ガイドラインの取り決めとは異なった陣痛促進剤の使い方をしたことで事故になり、当事務所に相談に来られる方はすくなくありません。
無痛分娩を行わない自然分娩でも、すべての産婦さんが陣痛促進剤の知識を十分に知り、産婦さん自身が異変に気づくことができれば、自分の身を自分で守ることができます。陣痛促進剤のことも、産婦人科医や助産師まかせにせず、しっかりリスクを知って納得してほしいと思います。そんな妊婦さんが増えてゆけば、間違った使い方をする産婦人科医や助産師は減り、安全なお産が増えるはずだと信じています。
陣痛促進剤は、正しく使えば出産を安全に進めるための薬剤です。しかし、陣痛促進剤の効果には個人差があり、人によっては効果が強く出過ぎて危険なこともあります。薬剤の種類によっても、効果は様々です。そのため陣痛促進剤は、いつでも誰でも簡単に使用できる薬剤ではなく、慎重で十分な管理が必要です。そのような理由から、夜間帯や休院日は陣痛促進剤を使用しないというルールの病院やクリニックもあります。自分が出産を予定している施設ではどうなのか、心配であれば是非、聞いてみてください。
また陣痛促進剤を使用するにあたって、各薬剤には禁忌や慎重投与となる場合が、産婦人科診療ガイドラインにしっかりと記載されています。禁忌に該当する産婦さんは陣痛促進剤を使用することができません。
またどの陣痛促進剤も2つ以上併用することは絶対に禁忌です。薬の調節が難しくなりますし、効果が強くなりすぎてしまうと、子宮破裂や陣痛が長すぎたり強くなりすぎたりして、お母さんの体だけではなく、赤ちゃんにも悪影響が出る可能性があるからです。違う種類の薬剤を連続で使用する場合は、陣痛の状態やお母さんと赤ちゃんに異常がないことを確認したうえで、必ず1時間以上間隔を空けてから使用するように決められています。
| 医学的適応 | 胎児側の因子 | 1. 児救命等のために新生児治療を必要とする場合 |
|---|---|---|
| 2. 絨毛膜羊膜炎 | ||
| 3. 過期妊娠またはその予防 | ||
| 4. 糖尿病合併妊娠 | ||
| 5. 胎児発育不全 | ||
| 6. 巨大児が予想される場合 | ||
| 7. 子宮内胎児死亡 | ||
| 8. その他、児早期娩出が必要と判断された場合 | ||
| 母体側の因子 | 1. 微弱陣痛 | |
| 2. 前期破水 | ||
| 3. 妊娠高血圧症候群 | ||
| 4. 急産予防 | ||
| 5. 妊娠継続が母体の危険をまねくおそれがある場合 | ||
| 社会的適応 | 1. 妊産婦側の希望等(CQ405 参照) |
| 子宮収縮剤 | 禁忌 | 慎重投与 |
|---|---|---|
| 共通 |
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| オキシトシン |
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| プロスタグランジンF2α |
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| プロスタグランジンE2(経口薬) |
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陣痛促進剤は使い方によっては、陣痛が強くなりすぎ、お腹の中の赤ちゃんが苦しくなってしまう可能性があるため、使用前と使用中には、お母さんのお腹に心音計と陣痛計をベルトで巻いて、赤ちゃんの心音と陣痛の間隔を測るCTG(胎児心拍陣痛図)というモニターを必ず装着しなければならないことが産婦人科診療ガイドラインで決まっています。
CTGモニターを装着して赤ちゃんが元気かどうかの確認ができないと、赤ちゃんのSOSサインがキャッチできないため、陣痛促進剤を使用することができません。
陣痛促進剤を使用する上で一番危険なことは、人工的に子宮を収縮させる薬剤であるため、陣痛が頻回に起こりすぎてしまうことです。陣痛が頻回に起こることを、「過強(かきょう)陣痛(じんつう)」といいます。陣痛が頻回に続くと子宮が休みなく収縮している状態なので、子宮に血が流れにくくなり、子宮に包まれている赤ちゃんの体も締め付けすぎてしまい、赤ちゃんに酸素が行き渡りづらい時間が長くなってしまいます。陣痛が10分間の間に5回以上起こっている場合を過強陣痛と判断します。通常の陣痛は、陣痛と陣痛のあいだの間隔が2分間隔であれば問題ありませんが、1分~1分半などの2分未満の間隔で陣痛が発来している場合は過強陣痛と判断します。
過強陣痛は子宮自体にもストレスがかかります。頻回に子宮が収縮することで子宮が破れてしまう「子宮(しきゅう)破裂(はれつ)」という状況になってしまうことがあります。子宮破裂が起こるとお母さんと赤ちゃん両方ともが命を落とす可能性があり、非常に危険です。
陣痛促進剤を使用している間、正しくCTGモニターで観察していれば陣痛の間隔が分かるので、現在の陣痛が何分の間隔で来ているかをリアルタイムで把握できます。助産師や医師は、陣痛促進剤を使用している間は過強陣痛を防ぐためにCTGモニターをしっかり判読しなければいけません。産婦人科診療ガイドラインではCTGモニターで陣痛の間隔と赤ちゃんの心音の状況を確認しなければいけない頻度について細かく決められています。助産師は、陣痛が頻回に来ていないか、赤ちゃんの心音は大丈夫か、と確認しながら、陣痛促進剤の点滴の投与量や内服などを調整していきます。この調整の判断が非常に重要であり、難しいです。陣痛が10分間に5回以上あれば、助産師は陣痛促進剤の投与量を減量・中止など調整して陣痛が頻回に起こらないようにしなければなりません。
陣痛促進剤を使用している産婦さんは陣痛の間隔が2分未満の間隔で来ていると感じた場合や、痛みがずっと続いて緩まないなど、不安があるときには迷わずに医師や助産師に聞いてください。
無痛分娩の場合は、陣痛の痛みが和らいでいるので産婦さんは陣痛が発来しているという感覚が乏しくなります。しかし、無痛分娩中でも、痛みはないけれどもお腹が張っている、という感覚は残ることが多いので、陣痛の間隔はわかります。お腹に手をあてると硬くなっているかどうかが更にわかりやすくなります。医師や助産師は、無痛分娩では頻回に陣痛が発来していることに気づきにくいことを分かったうえで、無痛分娩中のCTGモニターを観察する必要があるということです。
それぞれの陣痛促進剤の使用方法は産婦人科診療ガイドラインに細かく決められています。陣痛促進剤はそのぐらい慎重に使用しなければいけない薬剤です。
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
- 分娩誘発を行う理由、実施方法、代替療法、リスクに関して事前に説明する。(A)
- 分娩誘発を行う際は、その要約を満たしていることを確認する。(A)
- 分娩誘発の適応は、CQ415-1 の表1を順守する。(A)
- 頸管熟化の状態に基づいて分娩誘発の方法を選択する。
- 頸管熟化が不良な場合には、頸管熟化・拡張法を実施する(CCQ412-2 参照).もしくは、分娩誘発の延期を行う.(B)
- 頸管熟化が非常に不良な場合には原則として子宮収縮薬は用いない.(B)
- 子宮収縮薬を使用する場合には CQ415-1,CQ415-2,CQ415-3 の推奨を順守する.(A)
- 卵膜(用手)剥離はそれ以上の分娩誘発が必要となる妊婦を減少させることを認識する.(C)
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
- 適応があり禁忌がないことを表1,2で確認する。(A)
- 実施による有益性と危険性について,文書による説明と同意を取得する。(B)
- 投与開始前に分娩監視装置によって胎児心拍数陣痛図を記録し,以下を確認する。(A)
- オキシトシン,プロスタグランジンF₂α製剤使用前は重度胎児機能不全(レベル5の胎児心拍数波形が目安)でないこと。
- プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)使用前は胎児機能不全(レベル3〜5の胎児心拍数波形)でないこと。
- 経静脈投与時には精密持続点滴装置(輸液ポンプ等)を用いる。(A)
- 以下の場合は,子宮収縮薬を投与しない。(A)(CQ412-2 参照)
- 吸湿性頸管拡張材(ラミナリアなど)挿入中
- 他の子宮収縮薬投与中
- プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)に引き続いて他の子宮収縮薬を用いる場合,あるいは静注後にプロスタグランジンE₂製剤(経口剤)を用いる場合には,非投与期間(最終投与から他の薬剤開始までの期間)を1時間以上設ける。(A)
- 子宮頸管熟化薬のプロスタグランジンE₂製剤(腟用剤)(プロウペス®)に引き続いて子宮収縮薬を用いる場合には,非投与期間(最終投与から薬剤開始までの期間)を1時間以上設ける。(A)
- メトロイリンテル挿入中の子宮収縮薬投与は,挿入後1時間以上記録した胎児心拍数陣痛図の評価を行い,必要と判断した場合とする。(B)
- 基準範囲内量(表3〜5参照)で投与を開始する。(A)
- 子宮収縮薬投与で陣痛発来しなかった妊婦に再度分娩誘発を行う前には,Answer 1,3に従って再評価を行う。(C)
陣痛促進剤の種類
陣痛促進剤には用途に応じて使用する薬剤が変わっていきます。
陣痛促進剤には大きく2つのタイプがあります。
- 子宮の収縮(陣痛)を強くする薬剤(オキシトシン)
- 子宮口を柔らかくする薬剤(プロスタグランジン)
産婦さんの子宮口の状態(子宮口の開き、子宮口の硬さ)を内診で確認し、状態に応じて医師がどの陣痛促進剤を使用するかを決定します。
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
子宮収縮薬の増量および投与について
- 静脈内投与の増量、または内服薬の投与を考慮する場合は、以下の要件をすべて満たしていることを確認する。(B)
- 分娩進行に対して子宮収縮が不十分と判断される。
- 胎児機能不全(レベル3〜5の胎児心拍数波形)がない。(CQ411 参照)
- 子宮頻収縮(tachysystole[子宮収縮回数>5回/10分])がない。(CQ415-2 参照)
- 静脈内投与では前回増量時から30分以上、内服薬では最終投与から1時間以上経過している。
- 最大投与量(CQ415-1 参照)に達していない。
子宮収縮薬の減量および中止について
- 子宮収縮薬投与中に胎児機能不全あるいは子宮頻収縮が出現した場合には、産婦の状態を確認して必要に応じた対応を行い、さらに以下の 1)〜3)を実施する。
- 重度胎児機能不全(レベル5の胎児心拍数波形が目安)が出現した場合には、投与を中止する。(B)
- 静脈内投与中に胎児機能不全あるいは子宮頻収縮が出現した場合には、減量(1/2以下量への)あるいは中止を検討する。(B)
- プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)内服中に胎児機能不全あるいは子宮頻収縮が出現したら、以後は投与しない。(B)
- プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)の最終内服時から最低1時間は CQ415-2 を実施する。(A)
その他
- 胎児機能不全出現時の検討内容を診療録に記載する。(B)
- 産婦が異常に強い痛みを訴えた場合は、産婦の状態を確認して必要に応じた対応を行い、減量・投与中止を検討する。(C)
オキシトシン(アトニン)
オキシトシンは陣痛促進剤のなかで一番多く使われる薬剤です。点滴で投与します。
主に2つの働きがあります。
- 陣痛を起こす働き
微弱陣痛などの陣痛を強めたいとき、陣痛が始まっておらず陣痛を起こしたいときなど、人工的に子宮を収縮させたいときに使用します。
- 分娩直後の子宮からの出血を止める働き
赤ちゃんが産まれた後、赤ちゃんに酸素や栄養を送っていた胎盤が子宮から剥がれていきます。胎盤が剥がれた部分から出血が起こるので、その出血を止めようとして子宮はまた収縮を再開します。赤ちゃんが産まれてすぐにオキシトシンを使用し子宮の収縮をさらに強めることで、出血を早く止めて産後の大量出血を予防します。陣痛で子宮が疲れてしまい分娩後の出血がなかなか止まらないとき(弛緩出血)はオキシトシンの量を増加させた点滴を行います。
同じオキシトシンという薬剤ですが、分娩中と分娩後で使用する目的が変わります。例えば、陣痛を強くさせるためにオキシトシンを使用して分娩した場合、出産直後に分娩中に使用していたオキシトシンをそのまま点滴し続けることで産後の出血を止めることを助けます。大体、産後2時間程オキシトシンの点滴を続けて分娩直後の出血を予防します。
無痛分娩の場合、麻酔薬の影響での微弱陣痛で遷延分娩になってしまうことが多く、子宮が疲れてしまい出産直後の出血が止まらない弛緩出血が起こる確率が上がります。その場合はこのオキシトシンを大量に点滴します。
オキシトシンの投与について産婦人科診療ガイドラインで詳しく決められています。病院やクリニックによって投与開始の量や増量する量が変わりますが、産婦人科診療ガイドラインに記載がある範囲の投与量の中で決められています。
| 開始時投与量 | 維持量 | 最大投与量 |
|---|---|---|
| 1〜2ミリ単位/分 (6〜12mL/時間) |
5〜15ミリ単位/分 (30〜90mL/時間) |
20ミリ単位/分 (120mL/時間) |
増量法:30分以上経てから、1時間当たりの輸液量を6〜12mL(1〜2ミリ単位/分)増やす。
プロスタグランジン(プロスタグランジンF2α、プロスタグランジンE2、プロウぺス)
プロスタグランジンは陣痛を起こす作用もありますが、オキシトシンよりも子宮口を柔らかくさせて開きやすくさせる効果が強いため、子宮口が硬い産婦さんに使用することが多いです。
陣痛を起こすだけでは子宮口はなかなか開いてくれません。子宮口の柔らかさが重要です。子宮口が硬いままでは開くことが難しく、子宮口が柔らかい状態の方が分娩は進みやすいと言われています。医師や助産師が内診する際には子宮口の開きだけではなく、子宮口の厚さや柔らかさを必ず確認します。内診して子宮口が分厚く硬い場合は、プロスタグランジンを選択します。
プロスタグランジンは子宮だけでなく腸も刺激する作用があるため、消化器症状(下痢・腹痛 ・吐き気・嘔吐)が出現しやすい薬剤です。
気管支喘息の既往ある産婦さんには使用することができません。気管支喘息の既往がある方は医師に必ず伝えてください。
プロスタグランジンには点滴、錠剤、膣剤の3種類があります。
点滴(プロスタグランジンF2α)はオキシトシン同様、産婦人科診療ガイドラインに使用方法が決まっています。陣痛促進剤には感受性に個人差があるため、オキシトシンよりプロスタグランジンで分娩が進行する産婦さんもいます。
| 開始時投与量 | 維持量 | 最大投与量 |
|---|---|---|
| 1.5〜3.0μg/分 (15〜30mL/時間) |
6〜15μg/分 (60〜150mL/時間) |
25μg/分 (250mL/時間) |
増量法:30分以上経てから、1時間当たりの輸液量を15〜30mL(1.5〜3.0μg/分)増やす。
錠剤(プロスタグランジンE2)は、点滴に比べてゆっくりと効果が出てくる特徴があります。点滴と薬剤の内容が若干違うため、点滴よりも子宮口を柔らかくさせて開きやすくさせる効果が強いといわれています。
1時間ごとに1錠ずつ内服していきます。最終内服時間から1時間以上空ければ他の陣痛促進剤の使用することができるので、分娩の準備段階として使用している施設もあります。
しかし、錠剤は注意が必要です。点滴の場合は輸液ポンプで正確に管理されているので点滴速度をコントロールでき、異常があればすぐに減量や中止をすることができます。しかし錠剤の場合は一度内服してしまうと、減量や中止するということが不可能なので慎重に使用する必要があります。
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
(表5)プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)の使用方法 1回1錠、次回服用には1時間以上あける。1日最大で6錠まで 分娩監視装置を初回服用前に装着し、連続モニタリングを行う。最終服用時点より1時間は分娩監視装置で子宮収縮の消長について観察する。
- プロスタグランジンE₂製剤(経口剤)に引き続いて他の子宮収縮薬を用いる場合、あるいは静注後にプロスタグランジンE₂製剤(経口剤)を用いる場合には、非投与期間(最終投与から他の薬剤開始までの期間)を1時間以上設ける。(A)
また、膣に薬剤を直接留置して子宮口に薬剤を吸収させる膣剤(プロウぺス)があります。タンポンのような形をした布の先に薬剤が染み込んでおり、取り出し用の紐が付いていて、紐を引っ張ることで抜去できます。主に子宮口を柔らかくさせて開きやすくさせる目的で使用します。膣内に最長12時間留置したままにできますが、途中30分間に渡り規則的に痛みを伴う3分間隔の子宮収縮や途中に破水した場合、赤ちゃんの心音に異常が出てきた場合、過強陣痛の兆候がある場合は速やかに抜去する必要があります。抜去してもすぐには陣痛がおさまらないので、抜去するタイミングが難しいことがあります。感受性に個人差があり、人によっては膣剤を留置してすぐに効果が出現する人もいれば、あまり効果が出ない人もいます。
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
- 器械的頸管熟化・拡張法(吸湿性頸管拡張材,メトロイリーゼの使用)もしくは薬剤性の頸管熟化法(プロスタグランジンE₂製剤[腟用剤][プロウペス®]の使用)を行う場合は以下を行う。
- 実施による利益とともにおもな有害事象について,文書による説明と同意を取得する。(B)
- 入院後あるいは入院時の妊婦に実施する。(B)
- 感染徴候に十分注意し,前期破水例妊婦に対しては,血液検査等を適宜行い,必要に応じて抗菌薬を投与する。(B)
- プロスタグランジンE₂製剤(腟用剤)(プロウペス®)による薬剤性頸管熟化法では本ガイドライン CQ412-1 の Answer 1,2,3 の内容を遵守し以下を行う。(C)
- 妊娠37週以降の妊婦に使用する。
- 薬剤投与中は分娩監視装置による連続モニタリングを行う。
- 器械的頸管熟化・拡張法実施中の同時使用は行わない。
- 子宮頸管熟化完了と判断した,または以下が生じた場合は薬剤を除去する。その後の再投与は行わない。
- 3分以内の間隔で生じる痛みを伴う規則的な子宮収縮
- 過強陣痛やその徴候
- 投与中の破水
- 胎児機能不全
- 悪心,嘔吐,低血圧等の全身性の副作用
- 前期破水後に投与する場合は,本剤からのプロスタグランジンE₂製剤放出速度が急に高まる可能性を念頭におく。
- 子宮収縮薬(オキシトシンもしくはプロスタグランジンF₂α製剤の点滴,プロスタグランジンE₂製剤の内服)を投与する場合は,抜去後1時間以上の間隔をあけて開始する。
- 吸湿性頸管拡張材による器械的頸管熟化・拡張法もしくは薬剤(プロスタグランジンE₂製剤[腟用剤][プロウペス®])による頸管熟化法の実施中に,同時に子宮収縮薬投与を行わない。(A)
- 子宮頸管熟化薬のプロスタグランジンE₂製剤(腟用剤)(プロウペス®)に引き続いて子宮収縮薬を用いる場合には,非投与期間(最終投与から薬剤開始までの期間)を1時間以上設ける。(A)
禁忌
- すでに陣痛が開始している患者
- 子宮筋層の切開を伴う手術歴(帝王切開、筋腫核出術など)または子宮破裂の既往歴がある患者
- 胎児機能不全の患者
- 前置胎盤のある患者
- 常位胎盤早期剥離のある患者
- 児頭骨盤不均衡または胎位異常のある患者
- 医学的適応で帝王切開の患者
- 陣痛促進剤を投与中の患者
- 吸湿性頸管拡張剤(ラミナリア)やメトロイリンテルを実施中もしくはプラステロン硫酸エステルナトリウム(レボスパ)を投与中の患者
- 本剤の成分に対して過敏症のある患者
慎重投与
- 前期破水のある患者
- 過強陣痛の既往のある患者
- 緑内障またはその既往歴のある患者
- 喘息またはその既往歴のある患者
- 多胎妊娠の患者
- 正期産を4回以上経験している患者
陣痛促進剤ではないですが、器械的頸管熟化・拡張法と呼ばれる薬剤を使用しない方法で子宮口を柔らかくさせて開きやすくさせる処置があります。
メトロイリンテル(ネオメトロ、ミニメトロなど)
子宮口があまり開いていない場合や子宮口が硬い場合には、陣痛促進剤と併用して子宮口に水風船のような器具(メトロイリンテル)や棒状の器具(ラミナリアなど)を膣から挿入して、少しずつ子宮口を開かせていくという処置があります。病院やクリニックによって異なりますが、分娩時は主にメトロイリンテルがよく使用されています。
メトロイリンテルはチューブの先にしぼんだ風船のようなものがついています。子宮口に挿入し、チューブの先から清潔な水を注射器で注入します。子宮口の入り口で水風船のように膨らみます。水風船が膨らみ圧がかかることで子宮口に刺激を与えます。子宮口が刺激されて、陣痛促進剤の力も加わり子宮口が柔らかくなり開きやすくなってきます。風船の大きさや形には様々な種類があり、施設によって使用している商品が違います。陣痛促進剤と併用して使用されることが一般的です。先にメトロイリンテルを挿入する処置を行い、1時間後以上経過しCTGモニターに異常がなければ、陣痛促進剤(点滴・内服)を開始することができます。

産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
- メトロイリンテル挿入中の子宮収縮薬投与は、挿入後1時間以上記録した胎児心拍数陣痛図の評価を行い、必要と判断した場合とする。(B)
産婦人科診療ガイドライン2023より抜粋
- 吸湿性頸管拡張材による器械的頸管熟化・拡張法もしくは薬剤(プロスタグランジンE₂製剤[腟用剤][プロウペス®])による頸管熟化法の実施中に、同時に子宮収縮薬投与を行わない。(A)
- 内容量40mL以下のメトロイリンテルによる器械的頸管熟化・拡張法では以下を行う。
- 実施による利益とともに臍帯脱出を含めた有害事象についても説明して、当該処置への文書による説明と同意を取得する。(A)
- 挿入前に臍帯下垂がないことを確認する。(B)
- 陣痛発来時には、速やかに分娩監視装置を装着しモニタリングを行う。(B)
- 破水時、腟外脱出時には、臍帯下垂・脱出の有無を速やかに確認する。(B)
- 腟外脱出・抜去後も臍帯下垂・脱出に注意する。(C)
- フォーリーカテーテルを器械的頸管熟化・拡張法に使用する際には、目的外使用であることについて文書による説明・同意を得て、Answer 1 ならびに 4 の各項の内容に従い行う。(C)
- 内容量41mL以上のメトロイリンテルによる器械的頸管熟化、子宮収縮誘発・促進法では以下を行う。
- 生児の場合には、分娩監視装置による連続モニタリングを行う。(B)
- 頭位の場合には注入量は150mL以下とする。(B)
- 緊急帝王切開術が行えることを確認する。(C)
- メトロイリンテルと子宮収縮薬との併用は、メトロイリンテル挿入時から1時間以上分娩監視装置による観察を行ったのちに必要時子宮収縮薬を開始する。(B)
- 臍帯脱出時には、児娩出直前までの間、用手経腟的に先進部を挙上し続ける。(C)

(産科医療補償制度より)
メトロイリンテルを使用する場合に起こりうる危険なリスクとして「臍帯(さいたい)脱出(だっしゅつ)」があります。臍帯脱出とは、赤ちゃんがまだお腹に居る状態でへその緒(臍帯)だけが子宮の外に出てしまう状態です。外に出てしまった臍帯が赤ちゃんと子宮に挟まれて圧迫してしまうことで、赤ちゃんは息ができない状態になってしまいます。そのため臍帯脱出が起こってしまうと超緊急の帝王切開をしなければ赤ちゃんは助かりません。助かったとしてもなんからの障害が残る可能性があります。
挿入したメトロイリンテルが赤ちゃんの頭を上に押し上げることで空間ができてしまい、その隙間に臍帯が下に垂れてきてしまいます。メトロイリンテルを抜去した時にその空間がなくなり垂れてきた臍帯が赤ちゃんの頭より下に来てしまったままの状態(臍帯(さいたい)下垂(かすい))となります。その後、破水した時に赤ちゃんの頭より先に臍帯が子宮口から出てきてしまうことで臍帯脱出が起こります。メトロイリンテルは臍帯脱出が起こりやすい環境を作ります。

臍帯脱出が起こらないように、メトロイリンテルを挿入する前と抜去した後で、必ず経膣エコーで臍帯下垂の確認を行います。メトロイリンテル抜去後の移動を制限している施設もあります。
メトロイリンテルは水風船の大きさまで子宮口が開いてきたら、メトロイリンテルは子宮口から自然に抜けていきます。挿入中は、内診で子宮口にメトロイリンテルがまだ挟まっているか、抜けかけているか、完全に抜けているか、を確認します。内診の状態でそのまま続行するかメトロイリンテルを抜去するのかを判断します。メトロイリンテルを挿入したまま移動することは可能なので膣に挟まったままトイレに行くこともできます。しかし、移動している途中やトイレ中にメトロイリンテルが自然に脱出することがあります。その時に万が一同時に破水し、臍帯脱出が起こった場合は大変危険です。その可能性を考え、助産師はトイレに移動する前に必ず内診し、抜けていないかなどを確認します。
メトロイリンテルの種類によっては、破水している産婦さんには使用が禁忌になっている製品もあります。破水していると感染しやすい状態であるので、メトロイリンテルを使用するとさらに感染しやすくなってしまいます。
メトロイリンテルは異物であるので、感染が起こらないように抗生剤を投与します。
無痛分娩の場合は計画的に入院を希望するお母さんが多いため、陣痛促進剤と一緒にメトロイリンテルを併用する可能性が高いです。
陣痛を強くする目的で赤ちゃんを包んでいる膜を破り人工的に破水させる「人工破(じんこうは)膜(まく)」という処置を行う施設もあります。人工破膜も臍帯脱出が起こる可能性があるので、必ず経膣エコーで臍帯の位置を確認し、赤ちゃんの頭がお母さんの骨盤にしっかり固定していることを内診で確認してから破膜を行うことが決まっています。赤ちゃんの頭が固定できていない場合、臍帯が赤ちゃんの頭の下に垂れてきてしまう可能性もあるため人工破膜を行うことは危険です。特にメトロイリンテル抜去後の人工破膜は注意が必要です。
無痛分娩の場合、麻酔薬の影響での微弱陣痛で遷延分娩になってしまうことが多いため、陣痛を強くするために人工破膜を行う可能性があります。

(産科医療補償制度より)
この記事を書いた人(プロフィール)
富永愛法律事務所医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)
弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
