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解決事例

2026.09.01

【首都圏】常位胎盤早期剥離の見落としにより赤ちゃんが重度脳性麻痺に――示談により1億5000万円(産科医療補償制度の補償金を含む)で解決した事例

【医療専門】全国対応。北海道から沖縄まで対応しています。
出産時の医療事故(赤ちゃんや妊婦さんの重い後遺症や死亡など)でお悩みの方はご相談ください。
弁護士選びで大切なのは、確かな解決実績です。

ご相談の内容

妊娠36週の明け方、妊婦さんは急な出血に気付きました。その後も、さらさらとした出血が続き、下腹部の痛みもあったため、病院へ連絡し急いで受診しました。病院に到着後に助産師による内診があり、暗赤色の大量出血に血の塊が混じっていることが確認されていました。陣痛とは異なる下腹部の痛みが不規則に続いておなかが張って固くなっていることも確認されていました。ところが、医師は入院後に何時間も診察に来ることはなく、胎児心拍モニターによる経過観察だけが続けられました。
お母さんにとっては初めての出産で、出血と痛みが続く中で「赤ちゃんは本当に大丈夫なのだろうか」と強い不安を抱えながら、医師が診察にきてくれるまで待つことになりましたが医師が来ることはなく、赤ちゃんの心拍が弱々しい状態になってから大急ぎで緊急帝王切開をすることになりました。 緊急帝王切開での出産で、赤ちゃんは息もしておらず、心拍も止まりかけてぐったりした重度の新生児仮死の状態で生まれました。その後、蘇生が行われましたが、低酸素性虚血性脳症(HIE)となり、その後、脳性麻痺と診断されて、生涯にわたり寝たきりの状態で介護を常に必要とする重い後遺障害が残りました。

緊急帝王切開をしてから、赤ちゃんとお母さんをつないでいるはずの胎盤がはがれてしまう常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)になっていたことがわかりました。
常位胎盤早期剥離は、突然起こることがあり、出血や腹痛で早く病院に行ったかどうかが赤ちゃんにとって重要です。法律的には、常位胎盤早期剝離の事案では、「出血や腹痛があったその時点で常位胎盤早期剥離を疑い、対応すべきだったか」という病院側の対応(過失)の問題だけではなく、「その時点で帝王切開をしていれば重い後遺障害を避けることができたのか」という因果関係についても大きな争点となります。
これまで日本の裁判では、常位胎盤早期剥離のケースでは病院のミスを全面的に認めた判決はなく、診断の遅れはあったかもしれないが、早く診断していたとしても障害は残ったと判断されてきた経緯があります。

当事務所では、ご家族から詳しくお話を伺い、分娩記録や胎児心拍数モニター(CTG)、産科医療補償制度の原因分析報告書などを丁寧に確認しました。さらに、裁判になった場合に勝訴判決を得ることができるのか、特に因果関係を証明するための資料として国内外の医学論文、文献を収集して調査しました。さらに経験豊富な産婦人科医師複数名と検討・協議を重ねて証明が可能かどうかを十分検討しました。

その結果、裁判で証明をするための文献や協力医の意見書作成のお願いなども了解を得られたことから、病院の対応に問題があった可能性が高くその証明の方法も具体的に詰められるとの見通しをもとに、病院との交渉を開始しました。

常位胎盤早期剥離とは

常位胎盤早期剥離とは、本来は、赤ちゃんが生まれた後に後産(あとざん)としてはがれてくる胎盤が、出産前に、赤ちゃんがおなかの中にいる間に、はがれてしまう状態です。早剥(そうはく)と略して呼ばれることもあります。
赤ちゃんは胎盤を通して、お母さんからの酸素を受け取っています。そのため、胎盤が剥がれると、赤ちゃんに十分な酸素が届かなくなり、短時間で深刻な低酸素状態に陥ることがあります。その結果、脳性麻痺などの障害が残ったり、亡くなったりする可能性があります。また、お母さんも大量出血によって亡くなる危険がある怖い病態であり、産婦人科救急として迅速な対応が必要になります。
赤ちゃんがおなかの中で亡くなったり、生まれてすぐ亡くなってしまうこともあります。産科医療保障制度の対象になる(重度の脳性麻痺が残る)ことも多いため、日本医療機能評価機構・産科医療補償制度の再発防止委員会は、妊産婦さん向けのポスターなどを通じて、常位胎盤早期剥離の症状やリスク要因、早期受診の重要性を伝えています。妊婦検診の際に、出血や痛みがあったら連絡を!というポスターを病院で目にしたことがある方もいるかもしれません。

出産のときにお徴、産徴といわれる少量の出血があることは昔から知られていますが、常位胎盤早期剝離では、さらさらとした性器出血がみられることがあります。血の塊がドロッと混ざることもあるといわれています。
出血が体内(胎盤と子宮の間の壁)にとどまり、性器出血が少ない場合や、全く見られない場合もあるといわれています。出血がないケースでは見落とされやすいです。
また、腹痛は「生理痛のような痛み」という場合もありますし、おなかが板のように固くなる子宮板状硬がはっきりと確認できないケースもあります。

このような出血や腹痛などの典型的な強い症状がなくても、何となくいつもと違うと感じた場合は、我慢せずに病院に相談することが大切です。

産科診療ガイドラインではどのように扱われているか

産科医療の診療指針となる「産婦人科診療ガイドライン―産科編」(「産科診療ガイドライン」といいます)は、3年ごとに改訂されていますが、常位胎盤早期剥離と診断された場合に、原則として速やかな分娩(急速遂娩・きゅうそくついべん)が必要であることは、以前から強く推奨されています。

産科診療ガイドライン2023では、常位胎盤早期剥離の初期症状として「胎動の減少」が追記されました。
つまり、「いつものように赤ちゃんが動かない」というサインで見つけられることもあるのです。
また、おなかを打撲した場合には、外からの力によって胎盤がはがれ始めることがあります。打撲が軽症であっても常位胎盤早期剥離に注意し、特に子宮収縮を伴うときは、赤ちゃんの心拍数を継続的に確認するべきことについては、これまでは推奨レベルC(考慮する)だったものがB(勧められる)に引き上げられました。
最新版の産科診療ガイドライン2026でも推奨レベルB(勧められる)とされています。
赤ちゃんの心拍は病院に行ってモニターをつけなければわかりませんので、「そのようなサインがあった時にはすぐに病院に来るよう、指導しなければならない」とも言われています。

本件当時の産科診療ガイドラインでも、『下腹部痛や性器出血、子宮収縮があり、胎児心拍数の異常を伴う場合には、常位胎盤早期剥離を疑って必要な検査を行うこと』が求められていました。
また、常位胎盤早期剥離と診断された場合には、お母さんと赤ちゃんの状態を考慮しながら、原則として急速遂娩(緊急帝王切開など)を行うことが強く推奨されていました。 
胎盤の剥離は進行するごとに、赤ちゃんの状態が悪くなり、急激に悪化する可能性もあるため、早剥が疑われる場合には、「もう少し様子を見る」のではなく、赤ちゃんが深刻な状態に陥る前に出産させることが非常に重要です。

発症しやすいリスク要因

常位胎盤早期剝離は、100件の妊娠に1例の頻度で発生するといわれています。
突然発症するものですし、原因は明らかではありませんが、主なリスク要因(常位胎盤早期剥離になりやすい妊婦さんの特徴)として次のものがあります。

【常位胎盤早期剝離の主なリスク要因】

・妊娠高血圧症候群(血圧が高い、尿たんぱくがあるといわれている)
・過去の常位胎盤早期剝離(前のお子さんで早剥だといわれた)
・切迫早産(前期破水)(陣痛が来る前に破水してしまう
・おなかの外傷
・喫煙

これらのリスク要因を見て、私は大丈夫と思ったお母さんもおられると思いますが、実はリスクが全くない方にも、常位胎盤早期剝離が起こることがあります。
過去に常位胎盤早期剥離を経験したことがあると、次回の妊娠時の常位胎盤早期剥離の発症率が10倍くらい高くなるといわれています。
高血圧合併妊娠ではと2.48倍、妊娠高血圧症候群では4.45倍、喫煙では1.37倍上昇するとの報告もあります。妊婦さんが喫煙していなくても、受動喫煙がリスク要因となることも報告されています。

予防・早期発見のためには、まず自分にも起こるかもしれないという知識と、定期的な妊婦検診、禁煙や家族の協力が大切です。
常位胎盤早期剥離によって赤ちゃんに障害が残ったり、亡くなったりするケースでは、病院に到着する前に赤ちゃんの低酸素状態が進んでしまっていることもあります。
妊娠中におなかをぶつけた、妊娠高血圧症候群と診断されているなどのリスク要因があり、性器出血や持続する下腹部痛が起きたときは、できるだけ早く病院を受診することが重要です。

本件の妊婦さんは、妊娠中に血圧が高めになり妊娠高血圧症候群として管理されていました。このようなリスクがあったことを踏まえると、医師には、出血や腹痛があって入院してきた段階で、常位胎盤早期剥離を疑って迅速に適切な対応をすべきケースだったのに、何時間も放置されてしまったことが問題だと考えられました。
なお、本件の妊婦さんは、第2子の出産時にも常位胎盤早期剥離となりました。しかし、第1子の出産時とは異なり、病院が迅速かつ適切に対応したことで、第2子は障害なく元気に生まれました。そのような経験をして、より一層、初めのお子さんの時の対応に問題があるのではないかという思いが強くなったそうです。

本件で問題となった病院の対応

本件では、妊婦さんが来院した時点で、さらさらとした暗赤色の性器出血と下腹部痛が続いており、常位胎盤早期剥離を疑うべき症状が複数みられていましたから、産婦人科医や助産師が早剥を疑うことは難しくありませんでした。
さらに、来院直後から胎児心拍モニターが装着されていたのに、誰も正確に評価ができていませんでした。
当事務所で確認すると、入院後のモニターで、赤ちゃんが元気であることを示す「一過性頻脈(一過性頻脈)」が乏しくなり、心拍の細かな揺れを示す「基線細変動(きせんさいへんどう)」も減少気味になっていきました。これらは、赤ちゃんが低酸素状態になり始めている可能性を示す所見でした。
この時点で常位胎盤早期剥離を疑い、医師が診察したうえで必要な検査や緊急帝王切開を含む対応を検討する必要があったと考えられました。しかし実際には、胎児心拍モニターが装着された後も医師が診察に来ることはなく、経過観察が続けられました。

 入院してから、赤ちゃんの様子が弱々しくなってきたころのモニター波形を一部、示します。

来院直後のCTG(基線細変動減少)

一本の線のように見える上のグラフが、赤ちゃんの心拍の経過を示しています。
下のグラフはお母さんの子宮の張りを観察したグラフです。
赤ちゃんが元気であれば、上のグラフは、前後に揺れ動く波形(基線細変動中等度)になりますが、このように一本線のようになっているのは、赤ちゃんがおなかの中でぐったりして、ぼーっとしているため心臓の動きも変化が乏しくなっている様子(基線細変動の減少)を表しています。

 その2時間後の波形を下に示します。

赤ちゃんの心拍が下がっていき、波形が観察できない状況になっています。

約2時間後のCTG(基線細変動減少、遅発一過性徐脈、遷延一過性徐脈)

このように胎児心拍モニターには、時間経過とともに赤ちゃんがだんだんと苦しくなっていることを示すサインが現れていました。それにもかかわらず緊急帝王切開は行われませんでした。

特に、来院から約2時間が経過した時点の胎児心拍数の波形は、最も危険度の高い「レベル5」の異常波形であり、速やかに赤ちゃんを娩出させる必要のある状態でした。しかし、その後も経過観察が続けられたのです。
来院から5時間以上が経過し、赤ちゃんの心拍数が極めて低下し元に戻らない徐脈になってから、ようやく緊急帝王切開が決定されました。
緊急コールが行われ、妊婦さんはストレッチャーで急いで手術室に運ばれましたが、帝王切開前の時点で、すでに赤ちゃんの心音は確認できない状態となっていました。赤ちゃんは重度の新生児仮死で生まれ、重度の低酸素性虚血性脳症を発症しました。

常位胎盤早期剝離はいつ重症化したか

この事案で重要なのは「病院の対応が遅かった」ということだけではありません。
仮に早い段階で帝王切開をしていたとしても、その時点ですでに赤ちゃんの脳に回復できないほどの低酸素によるダメージが生じていたのであれば、法律的には病院の対応と脳性麻痺との因果関係を認めてもらうことは難しくなります。裁判をしても証明ができずに負ける可能性があるということです。

そこで当事務所では、カルテの記載やご家族からの聞き取りをもとに、経験豊富な複数の産婦人科医師とともに、数時間にわたる胎児心拍モニターの変化を時間の経過に沿って詳しく検討しました。
来院直後のモニターで既に基線細変動の減少など、赤ちゃんが低酸素状態になり、苦しくなり始めていることを示すサインも現れていました。一方で、その後いったん心拍は回復し、赤ちゃんが元気であることを示す一過性頻脈が確認された時間帯もありました。その後に、赤ちゃんの心拍数が急激に低下して2分以上回復しない波形、遷延一過性徐脈(せんえんいっかせいじょみゃく)が出現しはじめました。

こうしたモニター全体の経過やその他の所見を検討すると、来院直後の段階では、赤ちゃんは低酸素状態になり始めてはいたものの、まだ回復できないほど深刻な状態には至っていなかった可能性が十分にあると考えられました。

当事務所では、この点に着目して、関連する国内外の医学文献の有無を調査したところ、常位胎盤早期剥離は多様なバリエーションがあり、急激に進行するものもあれば、剥離30%程度で止まるケースもあることがわかってきました。
すべてのケースで発症直後から一気に悪化するわけではないとすれば、今回のケースがそのケースに該当することを証明できれば良いのです。また、赤ちゃんが重い酸素不足による状態である「胎児酸血症(たいじさんけつしょう)」に至る前に娩出できれば、神経学的な後遺障害を避けられる可能性が高いことが海外の文献でいくつも報告されていました。

本件では、「来院から約2時間後」以降に、「胎児酸血症」を示す波形異常が認められ始めていましたし、本件について作成された産科医療補償制度の原因分析報告書でも、同様の評価がありました。

日本での常位胎盤早期剝離の研究を行っている研究者が、どんな研究をしてきて誰が専門家で現在の最新の研究でどこまでわかっているのか等について文献を調べて整理し、日本の産婦人科学会の研究班で研究をしてこられた著名な先生にも連絡して会ってもらうことができました。何人もの先生が、たくさんのことを教えてくださった中で、産科医療保障制度の委員もされていた常位胎盤早期剝離の権威といわれる先生が何度も時間をとってくださり、「裁判になるようなことがあれば、客観的視点から意見を書いてもよい」と言っていただくこともできました。

これらを踏まえて総合的に検討し、少なくとも来院から約2時間が経過するまでの間は、まだ赤ちゃんは回復できる状態だったが、その後も放置されたことで深刻な低酸素状態に陥っていったこと、その時点で適切に帝王切開を行っていれば、赤ちゃんが深刻な「胎児酸血症」に進行する前に娩出できた可能性が高かったことを主張しました。

しかし、常位胎盤早期剥離は、発症後、短時間のうちに胎盤の剥離が急速に進み、赤ちゃんが重い低酸素状態に陥ることがあります。そのため病院側からは、「来院した時点ですでに重い低酸素状態になっていた」「もっと早く帝王切開をしても、結果は変わらなかった」と主張してくることが多く、今回のケースでも、病院側は「常位胎盤早期剥離は急激に進行する病気であり、仮に早い段階で帝王切開を行っていたとしても、結果は変わらなかった」と主張してきました。
これに対して、当事務所は、胎児心拍モニターの変化や医学文献などをもとに、赤ちゃんの状態が時間とともに悪化していったことを示し、「来院した時点ですでに手遅れだった」とはいえないことを具体的に説明する反論を書き、相手方代理人と直接医学的や、裁判ではなく話し合いによる解決をするべきケースであることを粘り強く説得して、何とか話し合いによる解決に至ることができました。

実は、相手方から来た書面には、「過失なし」「因果関係なし」ということが繰り返されていました。しかし、本件は、相手方代理人も一定の医学的知識を備えている弁護士だったため、電話で直接、医学的な争点について議論することができました。その中で、どう考えてもこのモニター波形からすれば、過失はあると考えられること、因果関係についても、こちらの見解を伝え、さらに常位胎盤早期剥離の権威である大学教授から意見を伺っており、裁判になれば意見書も書いてもらう了承を得ていることなども率直に伝え、このままでは、担当したドクターに法廷で証言してもらうことも含め、長期に及ぶ熾烈な戦いをせざるを得ないことも伝えました。
そこまで伝えたところ、相手方代理人としても全くミスがないとは考えていないとして、病院や保険会社と話合いをするということになり、こちらの依頼者の最低限の要望を伝えました。

解決結果

このように病院との交渉はかなり難航し、何回も書面のやり取りや電話での議論を繰り返し、最終的には、示談により1億5000万円(産科医療補償制度の補償金を含む)の支払を受けることで合意に至ることができました。

実のところ、当事務所としてはお子さんに重度の障害があることを考えると1億5000万円というのは低い金額だと思っています。しかし、なぜこの金額での合意に至ったかといえば、医療訴訟を実際に行うとなると裁判官に医学的知識が乏しいこともあり、解決までにかなりの長い時間がかかることを覚悟しなければなりませんし、裁判官が医学文献を読みこなせなければ敗訴する可能性もあります。
そんな中でも、ご家族は、お子さんが生まれてから、交渉中もずっと重い障害が残ったお子さんの在宅介護を続けていました。吐き戻しやおなかの張りへの対応、吸引を行うタイミングなど、常にお子さんの状態に常に気を配る必要のある生活で何年も過ごしてこられたのです。お子さんの筋緊張が強いためベッドに下ろすことも難しく、11kgのお子さんを長時間抱き続けなければならないこともありました。仕事を辞め毎日の介護を主に担ってきたお父さんには腰痛や関節痛などが続くようになり、お母さんにも腕の痛みなどが生じていました。
夜間にはお子さんが眠れず朝まで起きている日もあり、ご両親の身体的・精神的負担は非常に大きなものでした。そのような生活のなかで、負けるかもしれないリスクを抱えながらの裁判手続きは精神的にも負担になります。

常位胎盤早期剝離の裁判では完全勝訴した事件がこれまで一つもない、というところもご両親の心配されている点でした。(実際に、当事務所でも別の常位胎盤早期剝離のケースについて、病院側がミスを全く認めなかったため名古屋地裁の医療集中部で裁判をしています。勝訴するつもりで全力で戦っていますが、まだどうなるかはわかりません)

示談交渉や裁判の経済的な負担についても心配されておられ、弁護士費用については、当事務所が完全成功報酬でお引き受けすれば心配はないものの、裁判以外にも、お子さんの日々の生活には実際にお金も時間もかかっています。
これらの裁判をすることの大変さと実際の生活のことや今後のことなどをご両親と何度も話し合い、訴訟に移行することなく示談によって解決しようというと決意を固めました。
示談交渉でも2年以上かかりましたが、裁判でさらに3~5年かかることを考えれば、この解決にも大きな意味があったと考えています。

弁護士のコメント

常位胎盤早期剥離は、患者さん側が医療機関の責任を立証することが難しい類型の一つであり、今のところ、患者さんたちが裁判で完全勝訴した判決がありません。(一部の何百万円かの賠償が認められた判例はいくつかあります)赤ちゃんが脳性麻痺となった場合、一定の条件を満たせば産科医療補償制度による補償(総額3000万円)が行われます。しかし産科医療補償制度の対象となり補償を受け取ることと、医療機関に法的責任が認められることは別の問題ですし、実際のお子さんの介護状況を考えれば賠償金額は3000万円では全く足りません。
3000万円を受け取ることで我慢をしてしまっているご両親はまだまだ多いと思います。病院から損害賠償を受けるためには「常位胎盤早期剥離が起きた」という事実だけでは十分ではなく、医師が常位胎盤早期剝離を疑って診断や検査を行うべきだったのに、対応が遅れ、帝王切開の判断が遅れたこと、そして、その遅れがなければ脳性麻痺という結果を回避できた高度の蓋然性があったことなどを、医学的根拠に基づいて立証する必要があります。そのハードルは決して低くありませんが、カルテやCTGモニターの検討を行うことで、戦うべきケースかどうかは判断ができます。
本件では、診療録や原因分析報告書の記載だけではなく、経験豊富な産婦人科医師複数名と検討を重ね、胎児心拍モニターの波形が時間とともにどのように変化していったのかを詳しく分析しました。医学的な経過を一つ一つ整理し、病院側の対応と赤ちゃんに生じた障害との関係を具体的に説明できたことが、示談による解決につながったと考えています。
診療録や胎児心拍モニターを時間軸に沿って丁寧に読み解き、必要に応じて産婦人科医師の意見や医学文献を検討することで、責任の有無を具体的に検討できるケースもありますし、当事務所では、産婦人科医と連携しながら医学的・法的な両面から一つ一つの事案を時間をかけて丁寧に検討しています。
たとえ賠償や裁判が難しくても、カルテを見て何があったのかをご両親と一緒に読み解いていくことで、「ドクターが一生懸命してくれていたことがわかってよかった」とおっしゃる方もおられます。ほとんどの方は「相談してよかった」という感想をお持ちです。

出産時の病院の対応に疑問や不安をお持ちの方は、一度、ご相談ください。

常位胎盤早期剥離についてより詳しく知りたい方はこちらのコラム記事へ

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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