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医療事故では賠償金額はどうやって決まるの?

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。
1. 賠償金額はどうやって決まるの?
医療ミス、医療事故があった場合の賠償金額がどの様に決まるのか、心配をされるご家族は多いです。
金額の問題は、実際に弁護士を依頼するときにとても重要な点ですが、実は医学的な内容とは別の問題があります。弁護士に相談してみよう!と思うケースは、たいてい、患者さんやご家族から見ても「ミスがあるに違いない!」と感じるような医療事故です。
しかし実は、ミスが明らかで(過失あり)、因果関係も明らか(ミスがなければ元気に生きていたことは確実)だというケースは、医療ミスの賠償の場面ではそれほど多くありません。
ミスが明らかだから、賠償を求められる!と思われるのは当然です。それなのに実際の交渉では、因果関係の証明が難しく、賠償が低くなってしまうということが多いのです。それは、損害賠償請求権という権利があるためには、「過失」(ミス)があるだけでは足りず、悪い結果(死亡や後遺症)が起こっていたとしても、その結果とミスの間の「因果関係」が必要だと法律的には考えられているからです。
患者側の弁護士は、「過失」と「因果関係」の両方を8割以上の確実性をもって、証拠を示しながら証明しなければ権利が認められないのです。
反対に言えば、因果関係の一部でも客観的証拠が足りなければ権利はない、ということになります。
そのため、病院側から「ミスがあるからお金を払う」と言われていた場合でも、提示される金額が不当に、とても低い、ということが出てくるのです。
金額の問題について、交渉の相手は、病院や医者ではなく、病院の加入している保険会社です。
相手方の代理人(弁護士)は、保険会社のために動くのが仕事ですから、できるだけお金を払わないで済むように、値切ってくるのが本来の病院側弁護士の仕事で、証拠が足りないところを突いてきます。そのため「話し合いはしてもいいが、金額は(人が死んでいても!)100万円程度だ」というようなことを平気で言ってきます。患者側代理人からすると信じられないことですが、このような不当に低い金額も珍しくありません。低い金額提示があると、ご家族とすれば、感情的に「許せない!」という怒りが湧いてくることは当然です。しかし、患者さんの代理人として、弁護士は相手方がなぜ低い金額を提示してきたのか、その理由や、相手方の考えていることを冷静に見極めなければなりません。冷静さを失うと、交渉も裁判もうまくいきません。
相手方が言ってくることの背景として何を考えているのだろうかを色々な側面から病院側弁護士になったつもりで検討します。
過失がないといえる?
あるいは、ミスがなかったとしてもお子さんには何らかの障害が残った可能性がある?
因果関係がない?
証拠が足りない?
後遺症の一部は認めるとしても全部ではない?
亡くなった原因は病気のせいで病院や医者ののせいではない?
等ケースによって背景の事情は様々ですが、相手方が何を考えているのか、相手方代理人と文書や電話で、やり取りを重ねながら、どこを問題にしているのかを推測していくことが必要です。
最近はカルテなどをAIに読み取ってもらい、法的な賠償が出来るかどうかの分析までされるご家族もおられますが、今のAIでは、まだ何が過失か、因果関係が証明できそうか、というところまでの考察はなかなか難しいようです。さらにAIが解析しきれないのは「相手方がどんな弁護士で、どんな事情を抱えていて、何を考えて、何を言ってくるのか?」というところだと感じます。(相手方弁護士の経験や仕事ぶり、キャラクターや裁判での粘りまでわかる様になれば、将来的には、裁判の勝敗確率までAIに解析できる時代が来るのかもしれません。)
例えば、お子さんが出産事故で亡くなってしまった場合を考えます。
病院はミスを認めていても、「ミスはあったが死亡慰謝料にあたる2000万円以上の払えない」などの反論が考えられます。このような反論があった時には、死亡した結果とミスとをつなげる因果関係を示す証拠がないだろうと考えているのだな、それなら証拠を揃えて提出し、説明を加えれば、相手方の考えを変えることが出来るかもしれない、というように相手の反論に応じて戦略を立てます。
反対に、どんな手段を使っても証明が難しそうなケースであれば、たとえ裁判をしたとしても完全勝訴は難しいことになりますので、ご家族からすれば低い金額であっても裁判して完全に敗訴するよりは、ミスを認めた分の金額として、示談金を受け取ることの方が(経済的には)有利だというときもあります。
医療事故では、気持ちとして納得できない思いを抱えて相談に来られる方が多いです。しかし、今の日本の法制度では、弁護士に出来ることは限られています。医師免許をはく奪することは弁護士にはできませんし、業務上過失致死罪を負わせることも警察や検察の力を借りなければ難しい。
弁護士に出来る一番の仕事は、
『命や後遺症の代わりに、金銭でできるだけたくさんの補償をしてもらうこと』
『ご家族が納得できる形で交渉や裁判を進めること』
だと思っています。
医療事故では、お金に換算することだけではない部分も含めて、私達に何ができるのか、依頼者と一緒に弁護士がベストの方法を探っていく作業が示談交渉だと思っています。
事件解決の時、うまくいってもいかなくても、「この事務所に頼んでよかった」と言ってもらえるように、常に、出来ることと出来ないことを冷静に見極めながら進めるよう心がけています。 当事務所では、専門的に扱っている産婦人科や脳外科、脊椎外科等のケースや、救急、外科等のケースについての経験を積み重ねてきました。病院側の主張がどの様な意味を持っているのかは経験に基づいた推察が重要です。当然ながら、示談交渉のスタートである「通知書」作りから、病院側がいってきそうな反論を考えた上で、証明できるかどうかを考えながら作っていきますし、その視点でカルテを隅々まで見通します。示談交渉の途中でも、相手方の出方に応じて、その作業を繰り返し、最後の示談成立まで、出来る限り粘り強く続けていきます。
2. 賠償金額の決め方と考え方は?
示談のケースでどの程度の金額で解決したのか、という過去の事例は、基本的には公開されることはありません。当事務所では、これから動き出そう!と思っておられる方の参考になるように、できるだけ解決事例をホームページ上で公開していますが、そのような弁護士事務所はまだ少数派です。病院側の要望により、ほとんどのケースで「本件について・・・口外しない」という口外禁止条項を入れことになることが多いからです。
それでも当事務所では、患者さんたちに少しでも現実を知ってもらうため、病院や当事者の名前、地域などを特定できないような形にして解決事例を掲載しています。
相手方の病院長や理事長、担当した医師が頑なに示談を拒むようなケースもあり、そのようなケースでは裁判をせざるを得ないことになりますし、うまくいかなかったとしても、示談交渉で終わる方もおられます。どう進めるかについても、一緒に、時間をかけて考えていけばいいと思っています。
示談での金額を決めるときには、当事務所での経験と、公開されている裁判になったケースを参考に決めていきます。
お子さんが亡くなったケースでの金額の目安は、裁判でのケースをもとに、示談交渉なら約1000万円~7000万円程度。7倍もの幅があるのは、事例ごとに様々な事情があるからです。
過失の程度や悪質度だけでなく、因果関係の証明のしやすさ、裁判をした時の証明度や、過去の裁判例との均衡、さらには慰謝料+逸失利益+支出した実費なども加味して決まるものです。
裁判で全面勝訴した事例で、お子さんが亡くなったケースの裁判例は概ね5000万円から6000万円程度を認めたものが多いです。
3. 産科医療補償制度の給付金を受け取っている分はどうなるの?
産婦人科の出産事故でお子さんが重度の脳性まひになってしまった場合には、当事務所に相談に来られる前に、産科医療補償制度の給付金の支給が始まっていることもあります。
給付金を受け取っていても、損害賠償請求権はありますので、交渉で産科医療補償制度以上の金額の賠償を求めることもできます。
示談交渉での解決をするときには、産科医療補償制度が肩代わりしてくれていたものを病院が全部支払う、ということになります。
そのため、産科医療補償制度から支払いを受けられた分は、病院側の保険会社が産科医療補償制度の機構に返金することになります。そして示談が成立すると、その時点以降は、患者さんたちの残りの産科医療補償制度への請求が出来なくなります。病院との示談解決によって、産科医療補償制度が立替えをする必要がなくなり、病院側の保険会社から産科医療補償制度に示談によって解決したことを報告する決まりになっているからです。
4. 弁護士と報酬について話し合うときのポイントは?
示談交渉の委任契約をするにあたって、注意いただく点があります。
『弁護士費用の成功報酬の根拠となる金額算定について』です。
示談交渉がうまくいくかどうかは、まだ証拠を全く見ていないので何とも言えない段階で、うまくいったとき、うまくいかなかった時のことを考えなければなりません。
この、実際の金額的なシミュレーションが重要なのに、この点についての説明をきちんとしてもらえなかった、という相談も多く寄せられています。
当事務所では、医療ミスに遭った患者さんやご家族が、さらに弁護士ともトラブルになるということは絶対に避けなければならないと考えています。もし、今、既に弁護士に依頼されておられる方は、「金額のことを正直にざっくばらんに聞ける弁護士かどうか」を再確認してみてください。
5 実際の例で考えてみると?
当事務所では、
【交渉がうまくいき相手方病院や保険会社が支払いをしようと思った場合】
仮に5000万円で示談が成立した場合には、
[5000万円-(産科医療補償制度からの既払い金額)]×22%=当事務所の成功報酬金
という計算で当事務所の報酬を割り出します。
例えば、産科医療補償制度から1000万円を受け取られた時点で示談成立すれば、
(5000万-1000万)×22%=880万円ということになります。
【着手金ありの契約を希望される方の場合】
着手金33万円は別にお支払いいただくので、5000万円の示談の場合であれば、
880万+33万=913万円のご負担で、
3087万円を最終的にお手元に届ける、ということになります。
示談交渉がうまくいった例で、あくまでも客観的証拠があり、相手方が話し合いに応じ、その金額も、完全勝訴裁判の例と同程度(5000万円)が支払われた(すべてがうまくこちらの思い通りにいった)場合のシミュレーションですから、相手方が責任なし、0円といってきた場合には、着手金33万円やカルテ開示費用等が赤字になります。
示談が決裂しても諦めずに裁判所が関わる手続きなどに進まれるとすれば、民事調停や訴訟などの裁判所を通じた手続きをすることになり、訴訟の場合、示談交渉に比べて10倍以上の手間がかかるため、
・着手金110万円
・通常、勝訴のためには不可欠な医師の私的鑑定書(意見書) 作成費用として50-100万円弱
・勝てた場合には当事務所の成功報酬
もいただくことになります。
とすると、仮に、過失、因果関係の立証が出来、完全勝訴(5000万円~)の勝訴判決を得られたとしても、ご家族のお手元に残る金額から訴訟にかかる費用を引いた分、ということになり少なくなります。このことを考えて、示談交渉で終わりにするかどうかを考えなければなりません。
医療裁判は簡単ではありませんし、シビアな面もありますが、コラムやホームページだけでは、十分お伝えすることは難しいです。当事務所のスタッフは、特に産婦人科事故に関しては特化したエキスパート・メディカル・パラリーガルとして相当の勉強と経験を重ねてきています。事故の内容や示談、裁判手続きについての知識はある自負があります。法的に賠償することが難しいケースでも、その理由や考え方について、できる限り丁寧に説明するようスタッフ一同、心がけています。
モヤモヤした気持ちや不安を、当事務所の経験によって一つでも取り除けたら、と思っています。
どうかお気軽にお問合せください。
この記事を書いた人(プロフィール)
富永愛法律事務所医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)
弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
