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妊娠中に貧血になりやすいのはなぜ?対策は?

2024.02.09

富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。

弁護士と医師、両方の視点から医療問題について発信していきます!

なぜ妊娠中に貧血がおきやすいの?

貧血とは、赤血球の数が減少したり、赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)の量が減ったりする状態です。

妊娠中は赤ちゃんの成長のために、お母さんに蓄えられていた鉄分が赤ちゃんに優先的に送られます。
また、妊娠中は赤ちゃんに栄養と酸素を供給するため、妊婦さんの血液量が多くなります。血液量は妊娠32週ごろには非妊娠時の40~45%も増加します。その時赤血球も増えますが、それ以上に血しょうと呼ばれる血液の水分(細胞以外の成分)が多くなるため、相対的に見て血液が薄くなり貧血を起こします。

このような要因から、妊娠中は貧血が起きやすいと言われています。

血液が薄くなることは血液の粘性を下げて血栓塞栓症を予防するというメリットもありますが、過度な貧血は妊娠の経過の悪化にもつながりますので、貧血には食生活の改善や治療が必要になります。

妊婦貧血とは?

妊娠中の貧血を調べられた方は「妊婦貧血」という言葉を目にした方がいらっしゃるかもしれません。妊婦貧血とは、妊婦さんに起こる貧血の総称であり、診断基準は『ヘモグロビン値(Hb値)11.0g/dl未満、ヘマトクリット値(Ht値)33%未満』です。しかし、きめ細かく考えると妊娠期間によって基準は異なり、妊娠初期と後期の基準は『ヘモグロビン値(Hb値)11.0g/dl未満』ですが、妊娠中期は『ヘモグロビン値(Hb値)10.5g/dl未満』とされています。

参考:非妊娠時の成人女性貧血基準 
ヘモグロビン値(Hb値) 12.0g/dl未満
ヘマトクリット値(Ht値) 36%未満

前にも記述した通り、妊娠中は貧血を起こしやすい傾向があるため、貧血の判断基準も低くなっています。

成人女性の貧血の基準

また貧血には、鉄欠乏性貧血と葉酸欠乏性貧血があります。鉄も葉酸も赤血球の材料になるものです。

鉄欠乏性貧血

妊娠中の貧血は、鉄欠乏性貧血であることが大半であると考えられています。妊娠中の女性は赤ちゃんの赤血球を作るために、通常の2倍の鉄分の摂取が必要です。元々、人間の体では赤血球や肝臓、脾臓、骨髄に鉄を貯蔵していますが、妊娠中は赤ちゃんに優先的に鉄を送るので、お母さんの体に貯蔵されている鉄が減ってしまいます。

厚生労働省は月経のある成人女性の1日の鉄分摂取量の目安を10.5~11.0mgとしており、妊娠初期は2.5mg、妊娠中期・後期は9.5mgを追加で摂取することを推奨しています。中期・後期に至っては、非妊娠時のほぼ2倍もの量が必要です。

ちなみに鉄分が多い、ほうれん草で100gあたり2.0mgの鉄が取れると言われています。極端な例ですが、ほうれん草だけで妊娠中・後期の鉄分を賄おうとすると、1日あたり1kg食べる必要があるという計算になってきます。さすがにこれだけ食べるのは大変ですね。

成人女性1日あたりの鉄の摂取推奨量

鉄欠乏性貧血は血液検査で主に以下の値を参考に診断されます。

主な鉄欠乏性貧血の基準

葉酸欠乏性貧血

もう一方の葉酸欠乏性貧血は、巨赤芽球性貧血とも呼ばれ、葉酸やビタミンB12が不足することによっておこる貧血です。葉酸やビタミンB12が不足すると、DNAの合成時に異常が生じ、通常より大きなサイズの赤血球の元(巨赤芽球)が作られます。巨赤芽球の多くは赤血球になる前に壊れてしまうので、正常な赤血球が不足し貧血が起こります。

巨赤芽球性貧血は血液検査でMCV(赤血球の大きさを示す数値)が100fL以上の場合に疑われ、網赤血球数、ビタミンB12、葉酸の測定行うことで、診断をすることができます。

貧血になるとどういうリスクがあるの?

妊婦さんの貧血のリスクには以下のようなものがあります。

・赤ちゃんの発育不全(低出生体重児の増加)
・切迫早産の可能性
・お母さんのめまいやふらつきによる転倒事故の危険性
・出産後体力回復に時間がかかる

一般に貧血によってよく起こるリスクは赤ちゃんの発育不全です。貧血症状が悪化すると、胎盤へ送られる血液も減ってしまいます。赤血球は酸素を運ぶ小さなお盆のようなものですから、胎盤への血液量が減ると赤ちゃんに十分な酸素と栄養が供給できないため、成長が遅くなるリスクがあります。また、脳の発達にも影響が懸念されています。

イギリスのガイドラインには貧血によって分娩時の出血量が増加するとの報告もありました。
また、産後もお母さんの体力回復に時間がかかり、母乳は血液から作られるので、母乳が出にくくなるなどの影響もあります。

このようなリスクに備えるためにも、妊娠中はしっかり鉄分を補給しておきたいですね。

貧血防止に何を食べればいいの?鉄分豊富な食べ物とは?

鉄には、大きく分けてヘム鉄と非ヘム鉄の2種類が存在します。肉や魚などの動物性食品に多く含まれる鉄は、ヘム鉄といい、体内への吸収率が50%※とされています。野菜・豆・芋などの植物性食品や卵、乳製品に多く含まれる非ヘム鉄といいます。非ヘム鉄は吸収率15%※とヘム鉄よりも吸収率が下がりますが、良質なたんぱく質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで吸収率が上がると言われています。

※参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)P.315

また、妊娠中は控えている方も多いとは思いますが、食事中や食後のコーヒー、紅茶、緑茶は適量ではなく、大量摂取すると鉄の吸収を阻害するので、NGと考えられています。

2023年4月に文部科学省が発表した「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、ヘム鉄が多く含まれる食品には、あさりやいわしの水煮、豚レバーが上位に挙がってきています。ヘム鉄は主に動物性たんぱく質に含まれており、貝類やレバーなどに多く含まれます。ただし、妊娠中は生の貝による食中毒は危険ですので、しっかり加熱をしてから食べてください。水煮を利用するのもいいですね。

また、非ヘム鉄は大豆やいんげん豆などの豆類、ひじき、わかめなどの海藻類、ごまなどに多く含まれています。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率は落ちますが、パプリカやブロッコリーなどビタミンCの多く含まれている食材と一緒に食べることで吸収率を上げることができます。

日常に取り入れやすそうな鉄分を多く含む食材をピックアップしました。よろしければ参考にしてみてください。

ヘム鉄・非ヘム鉄を多く含む食品

鉄分が多く含まれている干しエビ、大豆、ごまと、鉄分の吸収を促進するビタミンCを豊富に含む、アボカド、ブロッコリー、パプリカを使用したおすすめレシピをご紹介します。

鉄分の他にもたんぱく質、ビタミンなど、しっかり採れるレシピになっているので、ぜひ試してみてください。

おすすめレシピ

重度の貧血になってしまったら、治療方法は?

鉄欠乏貧血の場合は鉄剤を内服します。鉄剤は下痢を起こす人もいるので、消化器官の症状がひどい場合には、点滴により鉄材を投与する場合もあります。体内に十分鉄を蓄えるまで、ヘモグロビン値が正常になってからさらに3カ月間の治療継続が推奨されているため、治療は長期間に及びます。鉄剤を服用している間、便が黒くなる場合があります。黒い便を見るとびっくりしますが、吸収されなかった余分な鉄分が排出されているだけですので、問題ありません。

また、呼吸困難、頻脈など症状が重い場合には輸血を行うこともあります。

葉酸欠乏性貧血の場合は、葉酸、ビタミンB12を内服します。また、葉酸欠乏性貧血の方の多くが鉄欠乏性貧血を合併していることが多いので、鉄剤も同時に服用します。

葉酸の摂取推奨量は妊娠していない状態で1日あたり240μg、妊娠中期・後期では2倍の480μgとされています。

成人女性1日あたりの葉酸摂取推奨量

また、妊娠中の葉酸摂取上限は1日あたり1000μg(1mg)とされています。

葉酸欠乏性貧血の治療には葉酸が5mg含まれている錠剤が処方されることもあります。葉酸の常習的な過剰摂取によって赤ちゃんの喘息の発症率が上がったとの報告もありますが、葉酸は水溶性ビタミンのため、一時的に取りすぎてしまっても、尿として排出されてきます。処方されたお薬を服用しても問題ありません。

妊婦さんの貧血には様々な危険性があります。赤ちゃんのため、ご自身のためにもサプリメントなども活用して、貧血を予防できると良いですね。

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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