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脳性麻痺と出産事故の関係|弁護士に相談するタイミング

2025.08.22

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。

実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。


脳性麻痺とは?出産事故との関係

脳性麻痺は、進行しないけれど、一生続く脳の障害です。
「受胎から生後4週間以内の新生児までの間に生じた、脳の非進行性病変に基づく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発現する。」と定義されています。

簡単に説明すると以下の特徴があります。

  1. 妊娠中から新生児期にかけて発生した脳障害
  2. 症状は姿勢と運動機能の障害
  3. 時間と共に進行するものではないが、成長しても症状は残る
  4. 将来正常化すると思われる一過性の運動発達遅滞は除く

脳性麻痺発症の原因のひとつに、出産事故があります。

出産時に赤ちゃんが酸素不足に陥ったり、分娩の際に外傷を受けたりすることで脳に障害が残り、脳性麻痺を発症することがあります。

ただし、脳性麻痺には先天的要因や妊娠中の合併症が影響する場合もあり、「事故によるものかどうか」を明らかにすることが大切です。

脳性麻痺について詳しく知りたい方は、「脳性まひとは」のページをご覧ください。

出産事故で脳性麻痺が起こる主な要因

出産事故による脳性麻痺の主な要因は以下の通りです。

・低酸素性虚血性脳症(HIE)
赤ちゃんが分娩中に酸素不足に陥り、脳にダメージが起きる。

・吸引分娩・鉗子分娩での外傷
ガイドラインに反する処置で頭蓋内出血などが発生。

・緊急処置の遅れ
母体の急変や赤ちゃんの心拍低下など、異常があったのに、帝王切開などの対応が遅れた場合。

このような出産事故の中には、避けられなかったものもあります。しかし医療機関側の判断や対応に問題があった場合は、医療過誤が引き起こした脳性麻痺と考えられることもあります。

出産事故と医療過誤の違い

「出産事故」と「医療過誤」は似ているようですが、実は意味が異なります。

出産事故とは、広い意味では「出産時に母子に有害な結果が起こった出来事」全般を指すことが多いです。その中には、医学的に予測や完全な回避が難しいものと、人為的なミスによるものの両方が含まれます。

出産事故の代表例

  • 常位胎盤早期剝離:胎盤が子宮からはがれてしまうトラブル。
  • 臍帯巻絡:赤ちゃんの首や体に臍帯が巻きつくこと。
  • 羊水塞栓症:母体の血管内に羊水が入り込み、重篤な合併症を引き起こす。
  • 臍帯脱出:赤ちゃんより先に臍帯が産道に下りてしまう。

これらは、起きること自体は避けられないトラブルといえます。

医療過誤に転じる場合

しかし、事故そのものは不可避でも、異常に気づかず対応が遅れた場合には「過誤」と判断されることがあります。
たとえば…

  • 胎児心拍モニターで異常が出ていたのに、気づかなかった、または気づいていたが放置した。
  • 高次医療機関への搬送や帝王切開の決断が遅れ、胎児の低酸素状態が長時間続いた。
  • 妊婦さんからの訴えや症状の緊急性を見誤り、母体の処置が遅れた。

このように、事故と医療過誤の線引きは「対応が適切だったかどうか」で決まるのです。

対応が適切だったかどうかは、産婦人科診療ガイドラインなど、守るべきルールに則っていたかという点が重要となります。

脳性麻痺が医療過誤によるものかを調べる方法

脳性麻痺が医療過誤によって引き起こされたと明らかにするには、カルテやCTG(胎児心拍陣痛図)などの記録の分析が不可欠です。

・カルテ・分娩記録・赤ちゃんの心拍を記録したCTGを産院へ開示請求する。

・医学知識を持つ弁護士に相談して、医学的な観点から検証する。

これにより「仕方がなかったのか、それとも医療過誤が原因か」を整理でき、場合によっては賠償請求に進むための基盤となります。

出産事故で脳性麻痺が起きた場合の補償制度

分娩に関連して脳性麻痺を発症した場合、まず検討すべきなのが産科医療補償制度です。

  • 対象:在胎数週28週以上、身体障害者障害程度等級1級または2級相当の脳性麻痺児
  • 補償額:一時金600万円+年間支給120万円を含めて総額約3,000万円。
  • 特徴:医療機関の過失の有無にかかわらず補償される。

出生時期により対象となる在胎週数や出生体重の基準が異なります。詳しくは産科医療補償制度とはのページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

さらに、自治体の障害者手当・医療費助成なども併用できます。
ただし申請期限や要件があり、専門家によるサポートを受けた方が安心です。

脳性麻痺や出産事故について弁護士に相談するタイミング

「赤ちゃんに障害が残るかもしれない」、「出産事故が原因かもしれない」と思ったとき、できるだけ早く専門家に相談することが大切です。

弁護士に相談するタイミングの例

  • 出産時の対応や、医師の説明に疑問や不安を感じたとき
  • 脳性麻痺と診断されたとき
  • 産科医療補償制度について説明を受けたとき
  • 原因分析報告書を受け取ったとき

富永愛法律事務所では、産科医療補償制度の申請からサポートします。医療過誤の有無の検証を行い、必要に応じて損害賠償請求など、ご家族のご希望に寄り添います。

まとめ

脳性麻痺は出産事故や医療過誤によって発症するケースがあります。

産科医療補償制度をはじめとする補償・支援を受けられる可能性があり、医師の説明だけでなく、弁護士など専門家に相談して第三者の視点で確認することが重要です。

出産事故・脳性麻痺に関するご相談は、産科医療LABO 無料相談ページからお気軽にお問い合わせください。

参考:産科医療補償制度HP

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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