新着情報
【連載】ファーストクライ第四話を見て

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。
ファーストクライ 第四話 「たった数時間の命・・・”奇跡“に挑む究極オペ」
今回は超絶リアリスト富永先生の発言に共感したドクターが多かったのではないかと思います。
医療の現場では、厳しい現実を受け止めきれない患者さん達から「誰のせいですか?」と問われます。
出産の現場では、どんな些細なことでもお母さんたちが「私のせいですか?」と自分を責めている。
しかし、そんな問いに対する答えを、医者は持っていないことが多いのです。
小児新生児科の先生達は、常に生死の境目にいる立場ですし、重い障害を持って生まれるお子さんたちに日々接している。
そんな立場である富永先生の「ありのまま正確に伝えるだけです」「オブラートに包んでも現実は変わらない」という発言は、ドキッとしました。
医療ミスの法律相談で、私自身が繰り返し説明していることだったからです。日本の医療裁判の現実を話すと冷たいと思われることも多いです。個人的には医療裁判でも、三井先生のように「可能性がわずかでもあるなら、トコトンあらがいたい」と思いますが、それを許さない医療裁判の現実もあります。しかし、医療裁判もまた「奇跡に近いことは起こります」。
外科や産婦人科の医療現場で「心に火をつける」ことと同じことが、医療裁判でもあります。
「これはおかしい」とみんな思っている場面で、火をつける役割を担う人がいれば、「おかしいことはおかしい」とチャレンジすることが出来る。
私の役割は、協力してくれる専門家の先生方の心に火をともし続けることかな、と思っています。
今回話題になったEXIT
「出産に関するEXIT」で調べるとリンタローさんが出産の現場に立ち会って感動した!という動画がたくさん出てきますが、今回の話題は、EXITという胎児治療法の一つ。
EXITは、Ex(外) utero(子宮) Intrapartum Treatmentの略です。
帝王切開をするときに、胎盤血流を維持(赤ちゃんが、お母さんの胎盤へその緒がつながったまま)赤ちゃんの一部を子宮の外に出して、まず色々な治療をします。その治療が出来てからへその緒を切るという、胎児治療法の一つです。 お腹の中にいる赤ちゃん(胎児)への治療は、実は数十年前から行われ始めています。
特に、双子ちゃんが相互に血液をうまく配分できない双胎間輸血症候群(そうたいかんゆけつしょうこうぐん)に対するレーザー治療や、胸水(肺にたまった水)を抜く治療、尿道閉鎖(おしっこが出る管が塞がってしまっている状態)にチューブを入れておしっこを出す治療などは古くから行われています。
脊髄髄膜瘤や横隔膜ヘルニアなどへの治療も行われるようになってきました。
日本胎児治療学会や日本胎児治療グループJFTGなどが中心となり、国立成育医療研究センターと大阪大学での治療経験が蓄積されてきています。
当事務所でも胎児治療後、双胎間輸血症候群に対するレーザー後の赤ちゃん一人が亡くなってしまったケースについての法律相談を受けたことがあります。
まだ新しい治療であるため、法的な過失といえるケースは多くありません。しかし当事務所に相談に来られるご両親は、お母さんの体にも負担になる治療であるというリスクについて十分、説明を受けていないことや、もっと簡単で成功率が高い治療だと思っていたことなど、ドクターから「いいことしか聞いていない」あるいは「悪いことは聞いていたかもしれないが、頭に入っていない」ということがトラブルの原因になっていると感じます。
主治医の先生に代わって私から説明をすると納得される方が多いですが、ドラマの富永先生のように、事実を冷静に伝えることも重要だと感じます。
現実の日本では、新生児科の先生方はひどい産婦人科医を一番よく知っています。(麻酔科の先生が酷い外科医をよく知っているのと同じです)
産婦人科の対応の遅れや判断の誤りで障害を負うことになったお子さんたちのことも。
でも産婦人科医ではない小児科の立場で、正直に語ることは許されない。
そんな中で、産婦人科医による産婦人科のピアレビュー(同僚による評価)が、他の診療科に先駆けて産科医療補償制度として始まったのは本当に意義あることだと思います。
まだまだ完全に公平な制度とはいえませんし、何らかの忖度バリバリだと感じる報告書もありますが、他の診療科にも適切に広がることを期待したいと思います。
多産DVー女性が望まない妊娠を回避するためのモーニング・アフターピルー
もう一つの話題は、帝王切開を繰り返す「子供(男児)を生む機械にされている女性」の物語。「多産DV」というと今風ですが古典的な問題です。
意に反して臨まない出産や妊娠を繰り返させることは、今も日本中で起きていることです。女性が望まない妊娠を回避するために、避妊を男性任せではなく自分でできる方法で確実にすること、モーニング・アフターピルはそのためにもとても重要な女性のためのキー・ドラッグです!
こんなことを書くと、だから権利意識がやたら高いだけの女弁護士、ということになってしまいますが、実は、こういった問題を扱うのが苦手な日本でも、厚生労働省の正式な会議での報告書があります。
男女間の暴力に関する調査(内閣府男女共同参画局)が5年以上前の2020年に行った調査による試算によると
この日本で
「1年間に6〜7 万人の女性が強制性交等の被害にあっている。
安全・安心ではない性的関係こそが最大の問題であり、その中で予期しない妊娠が起こり得る。
それに対する緊急避妊薬というのは、あくまでも支援の一環であり、総合的、継続的な支援の一環として取り組む、
あるいは避妊に失敗した状況における相談体制と診療体制の両方があることが最も望ましい」
と提言されているのです。
日本で生まれる赤ちゃんが70-80万人の現在、その10人に1人に該当するほどの事実上のレイプが起こっていることになります。これが日本の現実です。
モーニング・アフターピルによる緊急避妊を一般の薬局でも買えるようにする「スイッチOTC化」の検討会議でもこの報告結果が出されていますが、あまり話題にならなかったことがとても残念です。
病院のブランドイメージか、病院組織のメンツを守るか
「ブランドイメージを大切に考える院長」の視点は、東京ではすでにスタンダードだと思います。
何が大切か、医師のことや病院の経営についても真剣に考えれば当然の対応です。
東京と比べてしまうと、大阪を中心とする関西では、まだまだ現場の医者のことを考えず組織や病院のメンツのために振り回されているように感じます。
つい先日も、裁判では話し合いの雰囲気になっているのに、病院側の弁護士が、大きな病院組織の納得を得るために一応の反論をさせて欲しい、といいながらご遺族の感情を逆なでする書面を書いてきました。
これ以上ご遺族を傷つける必要はないし、現場の医師も早く話し合いによって解決したいと思っているはずなのに・・・
「感情がぐちゃぐちゃになるけれど全然いやな気持ちではない」医療裁判に関わる私も、いつも、同じことを感じています。
第4話こそは医療訴訟がらみの話題がもっと取り上げられると期待していたので、少し残念ですが、今後の展開に益々期待です。
第五話≫
\自分の出産は問題なかった?の疑問を一緒に考えませんか/
この記事を書いた人(プロフィール)
富永愛法律事務所医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)
弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
