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無痛分娩のメリット

2026.06.27

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。


無痛分娩にはメリット・デメリットが存在します。メリットももちろん大事ですが、無痛分娩に関してはデメリット(リスク)の方が多く、そのリスクを十分に理解してから無痛分娩を選択して貰いたいと思います。
無痛分娩は自由診療の医療行為です。自然の分娩では必要ない処置や合併症をあえて背負う処置であるということを忘れないでください。

陣痛の痛みが和らぐ

1番のメリットは陣痛の痛みが軽減されることです。「無痛分娩」と言われていても、痛みが全くないという訳ではありません。病院・クリニックや無痛分娩の方法にもよりますが、陣痛の痛みの強さが3割くらい軽減されるイメージです。痛みが全くない。ということではありません。
無痛分娩でも赤ちゃんが産まれてくるときは、陣痛が起こるタイミングに合わせてお母さんが力を入れて努責をかける(いきむ)必要があります。力を入れていきむ時には陣痛の痛みがあった方が全力でいきむことができるので施設によっては、いきむタイミングで麻酔を中止することもあります。
病院・クリニックよって、カテーテル(麻酔薬を投与するために背中に固定するチューブ)を挿入するタイミングや、麻酔薬を投与するタイミングなどが異なります。無痛分娩を希望し分娩先を選択する際には、その施設の無痛分娩の内容を詳しく確認するようにしてください。
例えば、

  • 麻酔科医が麻酔を担当するのか、産婦人科医が麻酔も分娩も担当するのか
  • 無痛分娩に対応している医師は何名在籍しているのか
  • 医師や助産師は無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JARA)が認定する研修を受講しているのか
  • 無痛分娩の麻酔の方法
  • いつのタイミングでカテーテルを挿入するのか
  • いつのタイミングで麻酔薬を投与するのか
  • 計画入院をして無痛分娩を行うのか
  • 無痛分娩に対応している時間帯
  • 日中だけでなく夜間帯や休院日の急変時の対応
  • 急変時のシミュレーションを行っているのか
  • 無痛分娩のマニュアルがあるのか

など

また、入院する日を決めて計画的に入院して無痛分娩を行うのか、自然陣痛が発来して入院した時に無痛分娩を行うのか、などそれぞれの病院・クリニックで方針が異なるので分娩先を選択する際は確認するようにしましょう。

計画的に入院して無痛分娩をするのか、陣痛が来てから無痛分娩をするのか

→無痛分娩をおこなう場合、計画入院をして無痛分娩を行う方法と、自然に陣痛が発来してから入院し無痛分娩を行う方法があります。日本全体では、計画入院で無痛分娩を行う産婦さんの割合が多いといわれていますが、施設によって入院の方法も違います。

計画入院とは、正期産(37~40週)の期間で医師と入院の日程を相談し、決まった日に入院します。入院してから陣痛促進剤を使用して人工的に陣痛を起こし、子宮口が開大するのを促していきます。病院・クリニックにもよりますが、入院する日にちは妊娠38~39週あたりの期間で医師が決めていることが多いです。本来の予定日の妊娠40週まで入院を待ってしまうと、自然に陣痛や破水が起こってしまう可能性があるため、予定日より早い週数での入院になることが多いと思います。

自然に陣痛が来てから無痛分娩を行う場合は、陣痛が始まって病院やクリニックに電話し病院に行きます。入院したときにはすでに陣痛の痛みがあることが多いので、助産師が内診し子宮口の状態を確認してから医師の判断で無痛分娩の処置を行います。
陣痛ではなく、破水から始まった場合、羊水の色や赤ちゃんの心拍などにもよりますが、破水後に自然に陣痛が発来することが多いので、入院して自然に陣痛が発来するのを待つことが多いです。自然に陣痛が発来しない場合は、陣痛促進剤を使用して分娩を進めていくので、計画入院での無痛分娩と同じようなイメージです。

病院・クリニックによって、最初に麻酔を注入するためのカテーテルを挿入して陣痛促進剤を使用し、陣痛が強くなってきたタイミングでカテーテルから麻酔薬を投与するパターンや、陣痛促進剤を始めて陣痛が痛くなってきてから、背中にカテーテルを挿入し麻酔薬を投与するパターンなどさまざまなので、必ず分娩先を決める際に無痛分娩の処置の流れを施設に確認し理解しておいてください。

病院・クリニックによって無痛分娩の入院方法の方針が異なります。
例えば、

  • 無痛分娩を希望する産婦さんは全例計画入院
  • 無痛分娩が目的の計画入院は行っていない
  • 全例自然陣痛が発来して入院してから無痛分娩を行う
  • 夜間や休院日は無痛分娩に対応しない
  • 24時間無痛分娩に対応している
  • 麻酔科医が在院しているときのみ対応している
  • 計画入院ができる週数や曜日が決まっている

など、病院・クリニックによって本当に様々です。

初産婦さん(1人目さん)と経産婦さん(2人目以降)でも無痛分娩に対してそれぞれで違いあります。初めてのお産の場合、無痛分娩の有無は関係なく、子宮口が開きにくいことが多く分娩が進行するのに時間がかかるため、初産婦さんが計画入院した場合産まれるまでに2~3日はかかることが多いです。入院して2~3日経過しても産まれない場合一旦退院し、仕切りなおして後日再入院することもあります。経産婦さんであっても2~3日産まれない場合があり、その場合も一旦退院することが多いです。
経産婦さんの場合は、陣痛が発来すると急激に分娩が進行してしまう場合があり、無痛分娩の麻酔が間に合わない可能性があります。そのため経産婦で無痛分娩を希望されている場合は計画入院しての無痛分娩を勧める施設もあります。

計画入院での無痛分娩と、陣痛が発来してからの無痛分娩、それぞれメリット・デメリットがあります。

計画入院での無痛分娩のメリット

  • 麻酔科医などのスタッフの人員が確保できている状態で無痛分娩を行える
  • 入院日が決まっているのである程度の予定の計画ができる
  • 前もって入院しているので無痛分娩を確実に行える可能性は高い(確定ではない)
  • 経産婦で分娩が速く進行した場合でも入院しているので、前もって早めに麻酔の準備が行える

計画入院での無痛分娩のデメリット

  • 休院日には計画入院できない施設がほとんど
  • 計画入院していても夜間に陣痛が発来した場合、麻酔を行わない方針の病院・クリニックもある
  • 一から人工的に陣痛を起こしていくので、お産に繋がる陣痛が発来して子宮口が開くまでに時間がかかることがあり、2~3日促進剤を使用しても子宮口が開いてこないこともある
  • 入院日=出産日ではない。入院当日に分娩できる場合もあれば、入院して2~3日してから分娩になることもある
  • 分娩につながる有効な陣痛が始まらない、子宮口が開かない、など分娩の進行がみられなければ、一旦退院することもある
  • 計画入院では、子宮口を無理やり広げ人工的に陣痛を起こしていくので、分娩に至るまでに長時間がかかるため入院期間が延びてしまい、陣痛促進剤を使用すること多いため、無痛分娩の費用に加えて入院費や薬剤の費用が値上がる
  • 入院して2~3日産まれないと不安・焦りが強くなり、気持ちが落ち込む産婦さんが多い
  • 計画入院での無痛分娩は陣痛促進剤の使用がほぼ必須であるが、陣痛促進剤を使用することにもリスクが伴う

陣痛発来してからの無痛分娩のメリット

  • 陣痛促進剤を使用し人工的な陣痛に比べ自然に発来した陣痛は、子宮口が開大する進行が速いことが多く、カテーテルを挿入し麻酔薬が投与されるときには、陣痛促進剤を使用しなくても、ある程度子宮口が開大した状態である
  • ある程度子宮口が開大している状態で無痛分娩を開始するので、計画入院での無痛分娩に比べると分娩にかかる時間が短いことが多い
  • 自然の陣痛を経験できる
  • 万が一、無痛分娩ができなかった場合、無痛分娩の費用が浮く

陣痛発来してからの無痛分娩のデメリット

  • 麻酔ができない、麻酔が間に合わない可能性がある
  • 特に経産婦は自然に陣痛が発来した場合、急激に分娩が進行してしまう可能性があり麻酔が間に合わない可能性がある
  • 陣痛や破水はいつ起こるか予測ができないので予定が立てにくい

など、それぞれにメリット・デメリットがあります。十分に理解して、自分自身の気持ちや家族・施設と相談し決定してください。

恐怖心や緊張も和らぐ

→お産に対して、「陣痛の痛みが怖い」「お産が緊張する」などのネガティブなイメージを持っている方が多いと思います。
赤ちゃんを包んでいる子宮は筋肉で構成されています。産婦さんが緊張していると子宮にも緊張がダイレクトに伝わってしまうので子宮口がこわばってしまいなかなか開いてくれません。また産婦さんが緊張してしまうと陣痛中の呼吸が上手に行えずお腹の赤ちゃんに酸素が伝わらなくなってしまい、赤ちゃんが苦しい状態になってしまいます。
分娩中は「力を抜くこと」が大切だといわれています。どれだけ痛くても息を吐くことを意識して呼吸を行い赤ちゃんに酸素を送ってあげるように意識しましょう。
しかし、どれだけ力を抜こうと自分では思っていても陣痛の痛みで全身に力が入ってしまい、次の陣痛はいつ来るだろう…さっきの陣痛より痛かったらどうしよう…と緊張してしまうと思います。
そこで無痛分娩を行うと、陣痛の痛みが和らぐので痛みに対しての恐怖心や緊張も和らぎ、リラックスして呼吸を行うことができるようになります。実際に、緊張でなかなか子宮口が開かなかった産婦さんに無痛分娩を行うと、身体の緊張が解けて子宮口が開いていったこともあります。

妊娠高血圧症候群(HDP)の場合、陣痛に伴う血圧の上昇を抑える場合もある

→妊娠中から血圧が高い状態の産婦さんのことを妊娠高血圧症候群(HDP)と診断されます。どの産婦さんも陣痛の痛みで血圧が高くなります。妊娠高血圧症候群(HDP)と診断された産婦さんは陣痛が発来していなくても血圧が高い状態であるため、分娩中は陣痛の痛みでさらに血圧が高くなります。分娩中に血圧が高くなりすぎると脳に負担がかかってしまい「子(し)癇(かん)」と呼ばれるけいれん発作や脳出血などが起こる可能性があり非常に危険です。そのため重度の妊娠高血圧症候群の妊婦さんは医師の判断で予定帝王切開になることもあります。血圧の状況によっては医師の判断で経膣分娩が行えることもあり、その場合は無痛分娩で陣痛の痛みを軽減させることで、血圧の上昇を抑えることが期待できるといわれています。

精神疾患や心・肺疾患の既往のある産婦さんには適していることもある

→精神疾患や心・肺疾患などの既往歴のある妊婦さんはあえて無痛分娩を行った方がいい場合もあります。医師の判断で勧められる場合があります。精神疾患などはあまり他人には言いたくないと思われる妊婦さんもいますが、無痛分娩に関係なくすべてのお産は命にかかわるため、既往歴は早い段階で隠さずにすべて正確に伝えるようにしてください。

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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