産科医療LABOについて
妊娠・出産のトラブル
相談の流れ・費用
instagram
youtube

新着情報

産科医療補償制度から「事例の経過」が送られてきたら「保護者の質問」「保護者の意見」は書いた方がいい?

2026.08.03

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。


産科医療補償制度の申請

お子さんに重度の障害が残ったときに小児科の先生から勧められて産科医療補償制度の申請をするご家族は多いと思います。

産婦人科医での出産時に分娩ミスがあったのではないか、トラブルがあったと思っていても、一生懸命にお子さんのことを考えてくれる小児科の先生には相談しにくい・・・そう思っておられる方も多いです。

産婦人科での出産事故は、たいていの場合、産婦人科医や助産師が適切な判断をしなかったことが原因で起こりますが、赤ちゃんが生まれてからの対応や治療をしてくれるNICUの先生は産婦人科医の対応については、何もコメントしないようにしておられることも多く真実が闇の中に葬られてゆくような気がしています。

そんな中でも小児科の先生方は、赤ちゃんの将来やご両親の負担のことを考えて「産科医療補償制度という制度がありますから1歳ぐらいになったら申請しましょう」とおっしゃってくださいます。

産科医療補償制度の申請の際には、赤ちゃんの脳がどの程度障害をうけたのか、後遺症について詳しい小児科の先生の診断書が重要になります。小児科の先生方は、多くの場合、できるだけスムーズに申請が通るように考えて診断書を作ってくださいます。

では診断書や産婦人科からのカルテなどがそろい、申請手続きが終わったら、待つだけなのか?というと、実は、ご家族が関わる重要な手続きがあります。それが、「保護者の意見」です。申請手続が終わり、無事に産科医療補償制度からの給付金の支払い決定があると、ご家族はまず、ホッとされます。一時金600万円と、20歳まで毎年120万円(毎月10万円)では、重度の障害を負ったお子さんの様々な負担を補償するにはまだまだ不十分な金額ですが、それでも、毎年10万円分の給付金はありがたいと感じておられるご家族は多いと思います。

給付が無事に振り込まれ、その後半年ほどたつと「事例の経過」という
カルテの記載をエクセル表で時系列にまとめたような資料が届きます。

ハサミで封筒をあけようとしている

 以下に示すものは当事務所に相談に来られた依頼者の「事例の経過」の一部を抜粋したものです。

事例の経過という、カルテの記載をエクセル表で時系列にまとめたような資料の中の1妊産婦に関する基本情報
事例の経過という、カルテの記載をエクセル表で時系列にまとめたような資料の中の妊娠経過
事例の経過という、カルテの記載をエクセル表で時系列にまとめたような資料の中の3分娩経過

このような一覧表が、何頁にもわたって送られてきて、「ご家族に対し意見や質問があれば記載して返送して下さい」とA4の用紙が1枚同封されてきます。

この一覧表は、産婦人科のクリニックや病院、搬送されたケースでは搬送先の病院のカルテに記載があることを、忠実に反映させて表にしたものです。
産婦人科医や助産師が書いていた「そのままの記載」を抜き出したものですので、実は、間違った判断をしていたり、間違った記載をしていれば、そのまま抜き出されています。

赤丸で示した一番左の欄に時間が示されています。
15:47~18:42の時間のところは、白ではなく「グレー」の網掛けになっているのがわかるでしょうか。
これは、分娩監視装置(NST、CTGといわれる、お母さんのおなかに巻く装置)をつけていた時間帯が示されています。なぜ、その時間がわかるかというと、産婦人科の病院やクリニックのカルテに含まれている「分娩監視装置装着」や「CTG」「モニター」には、時間の記録があるからです。
例えば下のように、モニターの上のところに時刻が記載されているので、その記録が一覧表にも反映されています。

NST、CTGのモニター記録は、
上の段が赤ちゃんの心拍数の変化
下の段がお母さんの子宮の収縮(陣痛)を記録しています。

そのためこのモニターの記録を追いかけてゆけば、
下の段からは、陣痛の間隔や、回数などの頻度、強さや弱さが見えてきます。
上の段は、おなかの中にいる赤ちゃんが元気かどうか、
元気がない波形がある場合には、胎盤の問題があるのか、臍の緒の問題があるのか、脳に障害が出るほどの問題かどうか、などが見えてきます。赤ちゃんがお腹の中から「SOSサイン」を出してくれていれば、そのサインが見えるのです。

このように「事例の経過」にまとめられている一覧表は、カルテやNST、CTGモニター波形を時系列に沿ってまとめたものですので、この一覧表を検討していくと、何が問題だったかが次第に明らかになっていきます。

ご家族と一緒に事実の整理をします

産科医療補償制度から産婦人科クリニックや病院に対しても質問が送られ、回答書が返送されて、下記のように産婦人科側の言い分が記載されます。

これと同じように、カルテには全く記載されていなくても、実は、当日の現場はかなりバタバタしていたとか、医師や助産師がひどいことをいったとか、そんなことも踏まえて、産科医療補償制度の専門委員のドクターに、きちんと評価して欲しいと思われるご家族は多いのではないでしょうか。
ご家族の記憶に残っていることがあれば、その事実も、きちんと書いていただけるように「問題になる時間」と「疑問・質問」を加えて送付すれば、たとえカルテに書いていなかった事実も、産科医療補償制度は、ご家族の記憶を、下記のように加筆してくれます。

事実の経過と別に家族からみた経過を記載できる欄

このような質問や意見を考えることは、ご家族だけではなかなか大変な作業ではないかと日々、感じています。

この「事例の経過」を一緒に見ながら、当時の事実を整理するという作業を、当事務所ではご家族と一緒にウェブ会議やメールを使いながら問題点を見つけていきます。
この作業は、あくまでも問題があったかどうかを明らかにして真実を探す作業ですので(交渉ではないので)、当事務所では、弁護士費用や調査費用などの費用は、一切ご負担いただいていません。産科医療補償制度の申請のお手伝いは、本来ご家族でもできる手続きだからです。

悪質な弁護士事務所では、ご家族でできる作業に対して費用を請求するところもあると聞いたことがありますが、うちの事務所では一切いただかないことに決めています。

この作業をする目的は、裁判や示談交渉をするためというよりは、何が起こっていて、当時のドクター達の対応に問題があったかどうか、医療ミスといえるかどうかを明らかにする作業です。
この作業を一緒に行うことは、ご両親やご家族と一緒に事実を見つけることですので、ご家族の思っていたこととは違う事実が判明することもあります。例えば、医療ミスだと思っていたけれど、実は、ドクター達は必死で、一生懸命に対応してくれていたことが判明することもあります。事故の原因は、産婦人科医が原因ではないことがわかることもあります。

ご家族からの質問書作成のお手伝い

そのようなケースでは、一緒に事例の経過を見ていくだけで、これまで真実を知りたいと思って悩んでいたことが解決することもあります。
一方で、産婦人科医や助産師が不適切な対応をしていたことが明らかになることもあります。
何が問題なのか、産婦人科診療ガイドラインに沿った対応をしていたのかを検討しながら、問題のある医療ミスといえるケースでは、産科医療補償制度に質問や意見をする貴重な機会ですので、産科医療補償制度の委員の先生方に向けて「ご家族の意見・質問」として、産科診療ガイドラインに沿っているのか評価して欲しい、という質問書を一緒に作成していきます。
当事務所ではこの質問書作成のお手伝いについても、費用は一切いただいていません。

例えば、このケースでは、当事務所で作成した質問をご家族の意見と一緒に機構に送り、機構からも質問に対する詳細な回答がありました。
産科医療補償制度からの回答は、カルテに書いていないことには答えない、という一貫した対応がとられます。判断や評価ができないことは判断できないと書いてきます。

以下は、実際に当事務所で作成した20個の質問(ア~ト)に対して、
産科医療補償制度から来た回答の一部です。

人工破膜時の児頭の用手回旋について児頭固定前に人工破膜や用手回旋を行うことは一般的か。医学的妥当性がある手段か。回答、今回の場合、人工破膜時の児頭の位置が記載されておらず人工破膜の手技の妥当性を評価することはできませんでした。これについては記録がないことは一般的ではないと評価しました。また、用手回旋の妥当性については評価できませんでした。
ガイドラインにおいて鉗子娩出術は急遽遂娩以外には実施しないと記載されているが臍帯脱出時に児頭を押し上げる目的で鉗子を用いる手技はガイドラインに沿った一般的なものといえるか。医学的妥当性はあるか。回答、当該分娩機関の医師記録からは鉗子器具の使用が急速遂娩目的だったのか児頭を押し上げて臍帯の圧迫を緩める目的だったのか判断できませんが、いずれの目的でも医学的妥当性がないと評価しました。詳細は原因分析報告書をご参照ください。
オ、ガイドラインにおいて鉗子娩出術を実施する場合は子宮口前回大かつ既破水であることが求められている。今回の場合子宮口全開大に至る前の子宮口開大7cm程度の時期に鉗子手技を実施したことは一般的なものといえるか。医学的妥当性があるか。回答、子宮口全開大に至らない状態で鉗子を挿入したことは医学的妥当性がないと判断しました。
カ、ガイドラインにおいて鉗子娩出術を実施する場合は原則として低い中在(中位)またはそれより低位かつ矢状縫合が縦径に近い(母体前後径と児頭矢状径のなす角度が45度未満)である要件が求められている。中在(中位)またはそれより低位ではなく矢状縫合が縦ではない時期に鉗子手技を実施したことは一般的なものといえるか。医学的妥当性があるか。回答、上記オと同様、児頭の位置にかかわらず子宮口全開大に至らない状態で鉗子を挿入したことは医学的妥当性がないと評価しました。詳細は原因分析報告書をご参照ください。

このような質問を考えるには、事故があった当時の産婦人科診療ガイドラインの記載内容を知っていなければなりません。そのためご家族にはなかなか難しい作業ではないかと思います。
このケースでは、産科医療補償制度の委員の先生方も、ガイドラインに反した医学的妥当性がない点や、一般的ではない点を、正しく評価してもらうことが出来ました。

最終的には産科医療補償制度から「原因分析報告書」が作成されてご家族のもとに送られてきます。
その内容が医療機関の医療ミスを指摘したものであり、適切な評価をしてもらえたことで、病院側とスムーズに話し合いを進めることが出来ました。

もし悩んでおられるならば、少しでも気持ちが晴れるよう一緒に検討してみませんか

弁護士に依頼することを躊躇しておられるご家族はたくさんおられると思います。
そんなご家族が、これまで抱いてきたモヤモヤした気持ちを、少しでも軽くするお手伝いをしたいと思っています。
当事務所では産科医療補償制度の原因分析をご家族と一緒に検討する作業を、産科医療補償制度が出来た当初からこれまで、地道に続けてきました。

お母さんが赤ちゃんを抱っこして手を握っている

裁判は考えていないが・・・と思いながらなかなか一歩を踏み出せないご家族がたくさんおられることも知っています。だからこそ、裁判を考えるかどうかよりも、まず、産科医療補償制度から送られてきた「事例の経過」をカルテと照らし合わせて一緒に確認し、質問を一緒に考える作業をすることについては一切、費用はいただいていません。

では、どうやって弁護士事務所を運営しているのか?
着手金無料は詐欺だとか、無料ほど怖いことはないというようなことを書いて患者さん達の不安を煽っている事務所があることも知っていますが、当事務所では、これまで勇気をもって一歩を踏み出し、示談や裁判で賠償を勝ち取ってきた依頼者の方々から、弁護士報酬をいただいてその弁護士費用で事務所を運営しています。
「解決事例」に紹介させていただいたそれぞれのご家族には、相手方から受け取った賠償金からお支払いいただく弁護士費用を、今後のご家族のために大切に使わせていただくこともお伝えすると、皆さん、同じような経験をするご家族や赤ちゃんがいなくなるように、という強い思いをもって当事務所の趣旨に共感してくださいます。
だからこそ、皆さん、本来辛い経験であるはずの内容を解決事例として当事務所のホームページで紹介することにも承諾して下さるのだと思っています。

具体的に解決賠償を求めるかどうかや、示談交渉をするかどうか、裁判をして勝算があるかどうか等、法律的な点については、ゆっくり検討し、ご家族と何度も話合いながら決めていきます。

もし、今、このコラムを読んでモヤモヤしたお気持ちのまま悩んでおられるなら、もしかすると当事務所で一緒に検討することで、そのモヤモヤが少しだけでも晴れるかもしれません。
どうか、お気軽にご相談いただけたらと思います。

関連コラム

産科医療保償制度から原因分析報告書を受け取られた方へ
脳性麻痺と出産事故|弁護士に相談するタイミング
産科医療補償制度の給付金をもらえれば十分ですか?脳性まひになったお子さんや家族は裁判できないの?
産科医療補償制度の原因分析報告書「医学的妥当性がない」ってどういうこと?!

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

相談のお申し込み