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解決事例

2021.07.19

妊娠高血圧症候群に対する血圧管理など必要な対応が行われず分娩中にけいれんを起こして妊婦が低酸素脳症となってしまったことについて2億円以上の和解が成立したケース

医療ミスの事案概要

近畿地方の産婦人科クリニックで妊娠高血圧症候群であった初産婦さんに対し、出産時に適切な血圧管理や処置が行われずけいれん発作が起こりました。けいれん発作のため呼吸ができない状態になったのに、バッグ・バルブ・マスク(アンビュー・マスク)による呼吸管理も十分に行われず、妊婦さんは低酸素脳症になり寝たきり状態となる後遺症が残りました。

妊娠高血圧症候群とは

法律相談までの経緯・検討内容

病院の対応に納得がいかないと、出産に立ち会ったご主人からの相談を受けて、まず、任意のカルテ開示によって医療記録を全て入手しました。当事務所で検討したところ、分娩の経過中に血圧が異常に高くなっていたのにガイドラインなどに沿った対応が行われず放置されていたことがわかりました。

また、血圧上昇によるけいれん発作が起こった後の対応も、本来であれば、呼吸ができない間は換気用マスク(バッグ・バルブ・マスク)で換気の補助をするべきところ、産婦人科クリニックに装備されていた換気用マスクバッグ・バルブ・マスクを点検しておらず不具合があったために適切に酸素を取り入れることができず、それが原因で低酸素脳症になったことが判明しました。

医療機関に話し合いでの交渉をしましたが、医療機関側から責任がないとの回答があったため、提訴しました。

裁判では医学的問題点を指摘

病院は医療機器のエラーなどと主張しましたが・・・

裁判では、病院側は血圧が高い数値が出ていたのは医療機器のエラーであるとか、血圧管理を行っていたなどと主張してきました。しかし、産婦人科クリニックの対応について医学的問題点を指摘したこちらの主張書面や血圧推移のグラフ、40件を超える医学文献、産婦人科医の意見書を提出するなどの主張・立証活動を行ないました。協力医である産婦人科医師に証人として出廷してもらい証言も得ました。

原告の主張をほぼ認める形での裁判所からの和解提案

問題を起こした産婦人科医師の証人尋問も行った結果、裁判所から、こちらの主張をほぼ認める形での和解の勧告がありました。

結果として、2億円以上の実質的勝訴の和解に至りました。
判決ではなく和解となったのは、裁判所からの和解案が原告の主張を概ね認める内容であったこと、判決を選択することで控訴・上告の手続きが続く可能性などを考えて依頼者と相談の上、裁判所の和解提案を受ける形で裁判上の和解に至りました。

富永弁護士のコメント

妊娠高血圧症候群は、けいれん発作や脳出血など妊婦さんに重篤な合併症を起こすことがあることが知られている産科では重要な病気です。産婦人科医師は妊娠中に常に妊娠高血圧症候群を念頭に置いて血圧を注視しなければならないといわれています。

そのため、妊婦健診では毎回、血圧が測定されます。
このケースでは、血圧モニターを付けて異常な高血圧がわかっていたのに管理を助産師に任せて適切な対応をしていませんでした。

妊娠高血圧症候群が重症化してけいれん発作となってしまい、更にけいれん発作が起こったときの対応も問題がありました。産婦人科クリニックには、このようなけいれんが起こったときのために、酸素投与のための換気用マスク(バッグ・バルブ・マスクなど)を常に点検して適切に使える状態にしておく必要があるといわれていますが、換気用マスクも不具合のあるものだったため換気をしようとしても酸素が送り込めない状況に陥ってしまいました。
詳細にカルテを検討して、これらの医学的な問題を一つ一つ裁判所に理解してもらえたことで、勝訴的和解に至れたケースと考えます。

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