解決事例
【中部】臍帯脱出への対応の遅れにより赤ちゃんが重度脳性麻痺に -病院側と2億5,000万円で示談が成立した事例(産科医療補償制度給付金を含む)
【医療専門】全国対応。北海道から沖縄まで対応しています。
出産時の医療事故(赤ちゃんや妊婦さんの重い後遺症や死亡など)でお悩みの方はご相談ください。
弁護士選びで大切なのは、確かな解決実績です。
このようなお悩みはありませんか?
・ 出産時の病院の対応が本当に適切だったのか分からない
・ 「臍帯脱出」「胎児心拍異常(CTG異常)」と言われたが、病院の説明に納得できない
・ 赤ちゃんに脳性麻痺が残った原因を知りたい
・ 出産時の医療事故について相談できる弁護士を探している
出産は本来、新しい命の誕生を迎える喜ばしいできごとです。しかし、ごくまれに、分娩中の医療上の判断ミスや対応の遅れなどによって、赤ちゃんに重大な障害が残ってしまうことがあります。
本件は、「臍帯脱出」という緊急事態が発生したにもかかわらず、病院で適切な対応がなされず、赤ちゃんに重度の脳性麻痺が残ってしまった事案です。
当事務所では、カルテやCTG(胎児心拍数陣痛図)の分析、産科専門医との検討、医学文献の調査などを行い、病院側の責任を追及しました。その結果、最終的に病院側と2億5,000万円(産科医療補償制度給付金を含む)で示談が成立しました。
本件で問題となったポイント
本件では、主に次の4つの点が問題となりました。
① 人工破膜の前後に十分な確認が行われていなかったこと
人工破膜を行う前には、赤ちゃんの頭が十分に下がっているか、へその緒(臍帯)が赤ちゃんより下に位置していないかを確認する必要があります。
しかし本件では、そのような確認を行ったことを示す記録が見当たりませんでした。
② CTGが危険なサインを示していたにもかかわらず対応が遅れたこと
人工破膜直後から、赤ちゃんが重い低酸素状態に陥っている可能性を示す危険な心拍異常が現れていました。
しかし、その段階で臍帯脱出を疑い、速やかに確認する対応は行われませんでした。
③ 臍帯脱出判明後も帝王切開の決断が遅れたこと
臍帯脱出は一刻を争う産科救急の代表例です。
ところが本件では、臍帯脱出が判明した後も、しばらく経腟分娩が試みられ、緊急帝王切開への移行が遅れました。
④ 鉗子が本来の目的とは異なる方法で使用されたこと
医師は鉗子を使用しましたが、それは赤ちゃんを娩出するためではなく、児頭を押し上げる目的で行われていました。
この対応も帝王切開開始の遅れにつながったと考えられました。
医療事故の事案概要
ご相談者は20代の初産婦の方でした。妊娠経過は順調で、お母さんにも赤ちゃんにも特に異常は認められていませんでした。出産予定日が近づき、総合病院へ入院して分娩管理を受け、分娩を進めるために「メトロイリンテル(ミニメトロ)」が使用されました。
メトロイリンテルとは、風船状の器具を子宮口付近に挿入し、膨らませることで子宮口を広げる医療器具です。誘発分娩で広く使用されていますが、使用状況によっては臍帯脱出のリスクを高めることが知られています。そのため、産婦人科診療ガイドラインでも、メトロイリンテル抜去後は臍帯下垂や臍帯脱出が起きていないか慎重に観察することが求められています。
本件では、その後に人工破膜が行われました。人工破膜とは、医師が人工的に卵膜を破り、破水を起こす処置です。人工破膜は分娩を進行させるために行われることがありますが、赤ちゃんの頭が十分に下がっていない場合や、へその緒が赤ちゃんより下に位置している場合には、臍帯脱出が起きる危険があります。
そのため、人工破膜の前には、①赤ちゃんの頭が十分に下がっていること②へその緒が赤ちゃんより下にないことを確認する必要があります。また、人工破膜を行った後も、速やかに臍帯脱出が起きていないか確認することが求められています。
人工破膜前後の確認は適切に行われていたのか
本件では、赤ちゃんの頭の位置について、分娩前日に確認した記録はありました。しかし、その後に確認を行ったことを示すカルテの記載はありませんでした。特に問題となったのは、分娩当日にお母さんが分娩室へ移動した後です。
赤ちゃんの頭がいったん骨盤内に固定されていたとしても、母体の体位変換や移動によって位置関係が変化することがあります。そのため、移動後には改めて赤ちゃんの頭の位置や、へその緒の位置を確認することが望ましいとされています。ところが本件では、そのような確認を行ったことを示す記録はありませんでした。そして実際に、人工破膜直後に臍帯脱出が発生しました。
臍帯脱出とはどのような状態か
臍帯脱出とは、破水後に赤ちゃんより先にへその緒が子宮口を通過し、産道側へ出てしまう状態をいいます。
赤ちゃんはへその緒を通じて酸素や栄養を受け取っています。そのため、臍帯脱出が起きると、へその緒が赤ちゃんの頭や産道によって圧迫され、血流が途絶えてしまうことがあります。イメージとしては、酸素を運ぶホースが強く踏みつけられてしまう状態です。その結果、赤ちゃんへ十分な酸素が届かなくなり、短時間のうちに重い低酸素状態へ陥る危険があります。このため、臍帯脱出は産科救急の代表例とされており、発見された場合には通常、緊急帝王切開などによって一刻も早く赤ちゃんを娩出することが求められます。
CTGは危険なサインを示していた
CTGとは、赤ちゃんの心拍数と陣痛の状態を連続的に記録し、赤ちゃんが苦しい状態になっていないかを確認するための検査です。本件では、人工破膜を行った直後から高度徐脈が認められていました。
高度徐脈とは、赤ちゃんの心拍数が著しく低下している状態です。これは赤ちゃんが重い低酸素状態に陥っている可能性を示す危険なサインです。CTGを確認した産婦人科医であれば、胎児が危機的な状態にあることを認識できる状況でした。この時点で臍帯脱出を疑い、速やかに内診などを行っていれば、より早い段階で臍帯脱出を発見できた可能性がありました。
問題① 臍帯脱出判明後も帝王切開の決断が遅れたこと
本件で最も大きな問題の一つは、臍帯脱出が判明した後も、直ちに緊急帝王切開が決定・実行されなかったことでした。
臍帯脱出が発生すると、へその緒が圧迫されることによって赤ちゃんへの酸素供給が途絶えてしまいます。そのため、臍帯脱出は時間との勝負になります。へその緒が圧迫される時間が長くなるほど、赤ちゃんの脳への酸素供給が不足し、脳障害が生じる危険性が高くなるからです。
一般に、臍帯脱出が発見された場合には、一刻も早く赤ちゃんを娩出することが求められます。ところが本件では、臍帯脱出が判明した後も、直ちに帝王切開へ移行するのではなく、しばらくの間、お母さんに対していきむよう促し、経腟分娩による娩出が試みられていました。しかし、その間も赤ちゃんは低酸素状態に置かれ続けていました。
本件で特に問題となったのは、臍帯脱出が判明してから帝王切開が決定されるまでに相当の時間を要していたことです。その結果、赤ちゃんの脳が酸素不足にさらされる時間が長くなってしまいました。
問題② 鉗子の不適切な使用
本件では、臍帯脱出が判明し、お母さんにいきむよう促した後、医師は鉗子を使用しました。
鉗子とは、スプーン状の金属器具を赤ちゃんの頭に装着し、赤ちゃんを母体外へ娩出するために用いる医療器具です。胎児機能不全などの緊急時には、帝王切開よりも早く赤ちゃんを出生させることができる場合があり、適切に使用されれば有用な処置です。
しかし、本件で問題となったのは、その使用方法でした。医師は鉗子を用いて赤ちゃんを娩出しようとしたのではなく、赤ちゃんの頭を子宮内へ押し上げようとしていました。これは、本来の鉗子分娩の目的とは大きく異なるものでした。
産婦人科診療ガイドラインにおいても、鉗子は急速遂娩のために用いる処置とされており、児頭を子宮内へ押し戻す目的で使用することは予定されていません。この対応に時間を費やしたことも、帝王切開開始を遅らせる要因となりました。
本件では、臍帯脱出が判明してから帝王切開が決定されるまでの間に、経腟分娩の試行や鉗子による対応が行われ、その結果、相当の時間的ロスが生じていました。
最終的に、臍帯脱出が判明してから帝王切開開始まで約25分、赤ちゃんが出生するまでには約30分が経過していました。
赤ちゃんの出生後の経過
最終的に緊急帝王切開が実施されましたが、その時点ではすでに長時間の低酸素状態が続いていました。
赤ちゃんは重度仮死の状態で出生し、直ちに蘇生処置が行われました。しかし、その後、低酸素性虚血性脳症(HIE)と診断されました。
低酸素性虚血性脳症とは、脳への酸素供給が不足したことによって脳細胞が障害される病気で、新生児期の重度の低酸素状態によって発症し、重い後遺障害が残ることがあります。
本件でも重度の脳障害が残り、その後、脳性麻痺と診断されました。 現在も、お子さんは日常生活のほぼすべての場面で介助を必要とする状態が続いています。
産科医療補償制度の原因分析報告書
本件では、産科医療補償制度による原因分析が実施されました。
産科医療補償制度とは、脳性麻痺となったお子さんとそのご家族を支援する制度です。この制度では補償金の支払いだけでなく、専門家による「原因分析報告書」が作成されます。原因分析報告書は、病院の法的責任を判断するためのものではありません。
しかし、
・ なぜ脳性麻痺が発生したのか
・ どのような経過で低酸素状態に至ったのか
・ 当時の医療行為が一般的な医療水準に照らして適切であったか
・ 同様の事故を防ぐために何が必要か
などについて、複数の専門家が医学的見地から検討した重要な資料です。そのため、医療過誤訴訟や示談交渉においても重視されることが少なくありません。本件でも、この原因分析報告書が責任追及の重要な出発点となりました。
報告書では、
・ 臍帯脱出による低酸素状態が脳性麻痺の原因であること
・ メトロイリンテルの使用や人工破膜、その後の分娩管理が発症に関与した可能性が高いこと
・ CTG異常出現後には迅速な娩出が必要であったこと
・ 帝王切開への移行が遅れたこと
などが指摘されていました。
当事務所の対応
ご両親は事故直後から、「本当に防げなかった事故だったのだろうか」という強い疑問を抱いておられました。
医師からは謝罪のことばがありましたが、ご家族としては納得することができませんでした。 医療事故では、医師が謝罪したからといって法的責任が認められるわけではありません。
法的責任を追及するためには、①当時の医師らが異常を認識できたか②本来どのような対応を取るべきだったか③ 適切な対応をしていれば結果を回避できたかなどを医学的根拠に基づいて立証する必要があります。
そこで当事務所では、カルテの精査①CTG波形の分析②医学文献の調査③原因分析報告書の検討④産科専門医との協議などを実施しました。
その結果、①人工破膜前後の確認不足②CTG異常への対応の遅れ③臍帯脱出発生後の対応の不適切さ④帝王切開決定の遅れ⑤鉗子の不適切な使用などについて病院側に法的責任が認められると判断しました。
損害額の立証
重度脳性麻痺の事案では、お子さんの生涯にわたり多額の介護費用が必要になります。そのため当事務所では、将来介護費・将来医療費・通院交通費・介護用品費・住宅改修費・慰謝料・将来の逸失利益などについて詳細な検討を行いました。
特に重度脳性麻痺のお子さんの介護では、ご家族が仕事やキャリアを大きく変更せざるを得ない場合も少なくありません。昼夜を問わず継続的な介護が必要となることも多く、その負担は極めて大きなものです。
当事務所では、ご家族の日常生活の状況や介護の実情について丁寧に聞き取りを行い、その内容を病院側へ具体的に伝えました。
また、住宅改修費についても、図面や見積書を提出するだけではなく、実際に改修予定の住宅を訪問し、ご家族や建築会社の担当者とともに現地確認を行いました。将来必要となる介護環境を具体的に示すことで、適正な賠償額の実現を目指しました。
解決結果
当事務所が収集した医学的資料や専門医の意見を踏まえ、粘り強く病院側と交渉した結果、病院側も一定の責任を認めました。
そして最終的に、2億5,000万円(産科医療補償制度給付金を含む)で示談が成立しました。
弁護士のコメント
出産時に赤ちゃんへ重い障害が残ると、多くのご家族が、「本当に防げなかったのだろうか」「病院の説明をそのまま受け入れるしかないのだろうか」と悩まれます。本件でも、ご家族は長い間そのような疑問を抱えておられました。臍帯脱出は、予測が難しい場合もあります。しかし、発生した後の対応については、医療機関に高度な注意と迅速な判断が求められます。
本件では、人工破膜前後の確認、CTG異常への対応、臍帯脱出発生後の判断など、複数の問題が重なった結果、重い後遺障害につながった可能性が高いと考えられました。
また、病院から「避けられなかった」「仕方がなかった」と説明されていても、カルテやCTGを詳細に分析すると異なる評価が可能な場合があります。
当事務所では、産科医療補償制度の申請支援から、カルテ分析、専門医との連携、病院との交渉、訴訟対応まで一貫して対応しております。出産時の経過について疑問をお持ちの方は、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
出産時の病院の対応に疑問をお持ちの方へ
本件は無痛分娩の事案ではありませんでした。しかし、無痛分娩においても、誘発分娩、人工破膜、鉗子分娩、吸引分娩などが行われることがあり、同様の問題が生じる可能性があります。
そのため、①CTG異常への対応は適切だったか②臍帯脱出への対応は適切だったか③緊急帝王切開の判断は遅れていなかったか④鉗子分娩や吸引分娩は適切に行われたかといった点は重要な検討ポイントになります。
当事務所では、脳性麻痺、臍帯脱出、無痛分娩に関する出産事故のご相談をお受けしています。
出産時の経過に疑問がある場合は、「本当に防げなかったのか」という観点から、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。
依頼されたご両親からいただいたコメント
まず、医療事故に直面した際に弁護士の先生へ相談すること自体、精神的に大きなハードルがあるものだと思います。特に、医療事故に精通した専門性の高い先生に相談するとなると、「自分たちの話をきちんと受け止めてもらえるのだろうか」と不安を感じ、なかなか一歩を踏み出せないご家族も少なくないのではないかと思います。
そのような中で、富永先生は私たち家族の話を一つひとつ丁寧に聞いてくださり、法的な観点だけでなく、私たちの気持ちにも寄り添ってくださいました。専門性の高さはもちろんのこと、相談者の立場に立って真摯に向き合ってくださる先生であり、安心してご相談できる方だと感じております。
今回、富永先生にお願いできたことは、私たち家族にとって本当に大きな支えとなりました。
同じように悩まれているご家族には、まずは相談するという一歩を踏み出していただきたいと思います。

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。