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「吸引分娩や鉗子分娩をやったことのない病院はいざというとき合併症を起こしやすい」とデータでも明らかに

2026.08.24

【医療専門】富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
出産のトラブル(赤ちゃんや妊婦さんの重篤な後遺症や死亡など)は当事務所にご相談ください。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、「これって本当に正しかったの?」「納得できないけど、どうしたらいいのか分からない」——そんな不安を抱えている方に、医学と法律の両方の視点から、安心できる一歩を踏み出していただけるようお手伝いします。


日々感じていた「経験の乏しい医者の危険さ」

産婦人科の出産事故の事件を扱っていると「吸引分娩をしたことがない」という産婦人科医が、いざ慣れない吸引分娩を行うことがどれだけ危険なことか、日々、肌で感じています。
吸引をすべきでないような場面で吸引をしてしまい赤ちゃんの脳を傷つけてしまったり、
お母さんの膣や肛門を傷つけてしまったり。
吸引をする方法に固執して、赤ちゃんの脳に障害を残してしまったり。
そんな相談が後を絶ちません。

しかし、私自身は個人的な印象だけでいい加減なことを語ってはいけないと思ってきましたし、弁護士のところにはそもそも事故を起こしてしまうような悪質な産婦人科医のエピソードが集まってくるだけのことで、客観的データとして「経験の乏しい医者は危険」と論じることは難しいと思っていました。

30万例を超えるデータが示す結果

そんな中、2025年に発表されたアメリカのカルフォルニア州で2008年~2020年にかけて行われた研究報告に目に留まりました。

この研究は、病院全体の器械分娩施行率が低いほど母児の合併症が高まる可能性を30万例を超える大規模データで示しました。
そこでは「経験の乏しい病院は合併症発生率が高い」という客観的データを示してくれています。
やはり!という思いで報告を読みました。

内容は、経腟分娩のうち鉗子や吸引などを用いた「器械分娩(Operative Vaginal Delivery:OVD)」の実施率と合併症発生率に関するもので、
英語の原文は「Obstetric Outcomes by Hospital Volume of Operative Vaginal Delivery」 
Annika S Willy医師たちの2025年の発表です。
無痛分娩では、半数以上が吸引分娩を必要とするといわれているため、これからの日本でも吸引分娩による様々な合併症が問題になってくるはずですので、これからの妊婦さんも無関係ではいられない問題だと思います。

この論文では、近年、帝王切開率の上昇と器械分娩率の低下が指摘されている中で、器械分娩施行率が低い病院では合併症が増加する可能性が示されています。医療者の熟練度や病院全体の対応体制など複合的な要因を検証する上で興味深い内容になっています。

 論文の主な結果は、以下の通りです。

まず、器械分娩の実施率が低い病院では、
器械分娩をした時の
母体合併症(産科肛門括約筋損傷、産後出血)
新生児合併症(肩甲難産、帽状腱膜下出血、骨折、腕神経叢損傷)の発生率が高い。
これは「あまりやったことのない病院は、いざやってみると合併症を起こしやすい」ということを示しています。

また、ある程度、器械分娩をしたことのある病院においても実施率が高い病院と比べると、やはり
頭蓋冠下出血(頭蓋内出血)や
腕神経叢損傷(赤ちゃんの腕の神経損傷により手が動かなくなる合併症)などのリスクが高くなっていて、
実施した経験が高いほど、合併症が起こりにくい」ということがはっきりと示されました。

この論文では、病院全体の器械分娩の症例数や医師の個人レベルの経験値、設備、人員体制など、複合的な要因が関与すると考えられると分析していますが、研究対象が病院ベースであって、個々の医師の症例数や経験が評価できていないという限界はありますが、今後、産婦人科が集約する必要性があるといわれている中で、吸引分娩や鉗子分娩などの実施率も一つ、着目することが必要ではないかと思います。

安全なお産のための提言

ある総合病院の産婦人科医長の先生は、この論文を参考に今後の日常臨床に生かせることを提言しています。

患者さんやご家族は自分の出産に立ち会ってくれる助産師や医師がどんな経験を持っているのかを知る方法はありません。しかし、例えば、無痛分娩に関してなら最低限、JALAの研修を受講している助産師や医師がいるのかは、JALAのホームページで情報収集することが出来ます。

後悔しないために・・・

そのような研修すら行わないまま無痛分娩が出来ます!と謳っているクリニックはそれだけで極めて危険な体制であることがわかると思います。
クリニックや病院を選ぶとき、近くにあるから、土曜日に診察しているから、フランス料理や個室が素敵だから、そんなことで病院を選んでいませんか?

当方のところに相談に来る方々は、JALAのことや、無痛分娩の危険性について、もっと出産前にちゃんと知りたかった!といわれる方が本当に多いです。後悔しないためにも、病院選びのポイントに「安全にお産が出来る体制だろうか?」という項目も、是非、加えていただきたいと思っています。

関連解決事例

適応を欠くにもかかわらず吸引・鉗子分娩などを行った過失から児が帽状腱膜下血腫となり死亡したとして約5400万円の損害賠償が認められた事例(山口地裁 平成27年7月8日)

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この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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