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解決事例

2025.11.12

【中国】妊娠高血圧症候群および胎児機能不全を放置し、胎児が死亡したことについて1200万円で示談が成立した事例

【医療専門】全国対応。北海道から沖縄まで対応しています。
出産時の医療事故(赤ちゃんや妊婦さんの重い後遺症や死亡など)でお悩みの方はご相談ください。
弁護士選びで大切なのは、確かな解決実績です。

医療ミスの事案概要

中国地方のクリニックで、破水のため入院となった妊娠38週の妊婦に、妊娠高血圧症候群の症状が出現し、胎児の心拍にも低酸素を示す波形が現れ、胎児機能不全(レベル4~5)の状態が続いていたにもかかわらず、助産師は医師の立会要請や急速遂娩の準備等を行いませんでした。

胎児には回旋異常もみられ、分娩の進行が停滞し、帝王切開で早くお腹から出してあげるべき状態でした。

その後、妊婦は子癇発作(けいれん)を起こし、高次医療機関に搬送されましたが、搬送時、胎児の心拍は確認できなくなっていました。

搬送先で帝王切開により娩出されましたが、残念ながら死産となりました。

クリニックとの話し合いにより、1200万円の支払いを受ける内容で示談が成立しました。

法律相談までの経緯

亡くなられた胎児のご両親は、クリニックから事故について説明を受けたものの、「一切責任がない」との説明に納得できず、当事務所にご相談くださいました。

クリニックにカルテ開示請求を行いましたが、一部しか開示されず、依頼者自ら裁判所に証拠保全の申し立てを行い、不足している資料の開示を求めました。

申立手続の途中から当事務所に相談があったため、証拠保全にあたり、事前に弁護士から特に重要な資料や当日の注意点など細かくアドバイスを行い、ご自身で保全をしていただきました。

事例の主な問題点

 1. 妊娠高血圧症候群への対応

 2. 胎児機能不全・回旋異常への対応

1.妊娠高血圧症候群への対応

入院後、妊婦の血圧は140/83mmHgの高血圧となり、妊娠高血圧症候群(昔の妊娠中毒症)に該当していました。

その後、152/94mmHgまで上昇しましたが、急速遂娩(帝王切開)の実施や高次医療機関への搬送は行われず、ガイドラインに沿った帝王切開の準備などの対応は実施されませんでした。

分娩監視は助産師に任せきりで、妊婦が子癇発作(けいれん)を起こしてから、ようやく医師が診察し、救急要請をしました。

搬送先では、血液検査の結果HELLP症候群と診断されました。

2.胎児機能不全・回旋異常への対応

入院から数時間経った頃から、CTG(胎児心拍数陣痛図)には、胎児の低酸素状態を示す「サイナソイダル・パターン」様の波形が出現していました。

その後も、胎児機能不全(レベル4~5)の状態が続いており、ガイドラインにあてはめると、原因探索、急速遂娩(帝王切開や吸引分娩など)の準備または実行、新生児蘇生の準備が求められる状況でした。

回旋異常も改善せず、分娩は停滞しており、分娩の進行具合から考えれば、速やかに帝王切開を実施するべきでした。

示談交渉

クリニック側は、過失と因果関係は認めましたが、当方が最初に提示した2800万円の請求に対し、急激に進行したHELLP症候群であったため、予見できなかったと主張し、死産(法律上、人として生まれる前段階)であることを理由に、慰謝料500万円の回答がありました。

しかし、本件は、赤ちゃんが徐脈(心拍が少なくなる)になる前に、帝王切開を行う時間的余裕があったケースであり、待望の第一子を出生直前に失ったご両親が受けた精神的苦痛は計り知れないこと、医療事故は交通事故よりも慰謝料が高額であるべきことなどを主張し、胎児死亡(死産)の類似判例を示しながら交渉を続けた結果、1200万円での示談解決となりました。

胎児死亡(死産)の慰謝料についての考え方を下記の解決事例で解説していますので、ご一読ください。

弁護士のコメント

もうすぐ生まれるはずの赤ちゃんが、生まれる直前にお腹の中で亡くなってしまう死産。

幸せな出産を心待ちにしていた両親にとっては、突然の大きな悲しみに襲われることになってしまいます。

何のリスクも予兆もなく赤ちゃんが亡くなってしまうこともありますが、産婦人科医の対応が不適切なために亡くなってしまうこともあるのです。

今回のケースは、お母さんの血圧が妊娠(胎盤)の影響によって上昇してしまう妊娠高血圧症候群になっていました。

血圧の上昇は、お母さんの体と胎盤の相互作用で起こってしまい、お母さんと赤ちゃんの両方の命が危険となる、怖い妊娠合併症です。

血圧上昇はいつ起こるか予測不能です。だからこそ血圧の測定や尿検査が重要なのです。

血圧が上がり危険な状態だったのに、今回のクリニックでは全く危機感がありませんでした。

もっと早く医師に報告していれば、子癇発作は起こらなかったと思います。

また、赤ちゃんのSOSのサインであるCTG波形をちゃんと観察していれば、亡くなることもなかったと思います。

明らかにクリニックのずさんな対応が招いた死産です。

お母さんの中には、自分が悪かったのではないかと自分を責めてしまう方がたくさんおられます。

「お母さんのせいではない!」それをまず知ってもらうことが、私たちの仕事の使命だと思っています。

ご家族も、「同じような辛い経験をされている方に、私たちの経験が、勇気に、励みになれば幸いです」と話してくださいました。

このご家族の想いが、今まさに悩んでおられる方々に届くことを、心から願っています。

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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