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弛緩出血

切迫早産などを含めると、妊娠・出産による合併症は全妊産婦の50%以上に発生すると言われています。
それだけ多くのトラブルが起こりやすい、妊娠・出産。
ここでは重篤化すると危険なお母さんに起こるトラブルを紹介します。

弛緩出血

どんな病気?

出産時に限界まで大きくなった子宮は産後、急速に縮んでいきます。しかし子宮の収縮が順調にいかずに子宮壁の胎盤剥離面の血管が開いたまま多量に出血してしまうのが弛緩出血です。通常は出血量が500ml以上を弛緩出血といいます。60㎏の人間の体に血液は12%(5L:5000ml)程度流れています。40㎏の人なら4.8L:4800mlです。500mlの出血というのは、体の1/10以上の血液が出て行ったことになります。


弛緩出血への対応は、子宮内に胎盤などが残っている場合(遺残胎盤)はそれを取り除き、子宮収縮薬の急速投与を行います。
弛緩出血の症状は、「お産が終わっても血が止まらない」という状態です。赤ちゃんを娩出後、つづけて胎盤を娩出(後産)した直後から持続する子宮腔内からの周期的出血です。血液の色はおもに暗赤色をしています。子宮を体外から刺激(子宮マッサージ)すると、通常は子宮収縮が促進されて子宮が固くなるのですが、弛緩出血を起こしている場合は一時的に収縮が起こるだけで、再度柔らかくなってしまいます。立ち会った医師は、経腟的に子宮に片手を入れ、もう一方の手で体外から子宮を押して、外と中から圧迫止血をしながら、子宮収縮薬を急速に点滴して子宮の収縮を待ちます。
出血が持続すると血圧低下や意識レベルの低下などの症状が現れ、出血性ショックやDIC(播種性血管内凝固症候群)に移行することもあります。

なぜ起きるの?

原因は、体質的なもののほかに、胎児が大きすぎたり、羊水が多すぎたりしたために子宮が伸びすぎること原因になっていることが多いようです。母体の年齢によっても、高齢出産では筋肉の柔軟性が乏しくなっているため弛緩出血が起こりやすくなります。あまりに長時間に渡る分娩で子宮の筋肉が疲労して収縮しないこともあります。
主な原因として、子宮収縮薬の長時間使用、多産婦、子宮筋腫、多胎児妊娠、絨毛羊膜炎、弛緩出血の既往、高齢出産(40歳以上)、巨大児、羊水過多症などが挙げられます。お母さんの命にかかわる恐れがあるほどの弛緩出血が起こるのは、250人に1人(0.4%)ほどの割合です。お産の回数が増えると子宮が縮みにくくなり弛緩出血のリスクは上がると考えられています。


弛緩出血は医師でも予想できず、お産をしてみないとわからないところがあります。子宮の筋肉が子宮の収縮に関係しますが、事前に鍛えるということもできませんので、確率された予防法はありません。
お産のときに、出血が続いている場合には、すぐに子宮収縮薬を投与しながら、圧迫止血をして子宮が収縮するように刺激を与え続ける必要があります。



※弛緩出血の出産トラブル例

出産が終わって胎盤を娩出(後産)した後に、問題がないと判断して病室に戻りましたが、子宮の中では弛緩出血が起こっていたことに気づかないままお母さんがショック状態になってしまったケースがあります。お産が終わったときには、弛緩出血が起こっていないかどうか、確認し、定期的に弛緩出血がないかをチェックする必要がありますが、そのような定期的チェックが行われなかったために、子宮の中に大量出血がおこっていたことにきづかれないままお母さんは失血状態になっていました。命はとりとめましたが、産科DICになり、長期入院が必要になりました。
現在は、弛緩出血が起こった場合の対応についても産科診療ガイドラインなどで定められています。特にお産の際に「大量出血」が起こった時の対応は、フローチャートになっていて、たいていの産婦人科では分娩室の壁に大きくわかりやすいフローチャート図が貼り付けられています。

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